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Pack Basic カードNo B-008 種類 ユニット レアリティ R 名称 バルキリークララ 属性 赤 種族 精霊 CP 3 BP 3000/4000/5000 アビリティ ■聖女の加護このユニットはブロックされない。 コスト3でBP3000と重く弱いが、ブロックされないという、常に浮遊術の状態という能力を持つ。 アビリティのアイコンは次元干渉が表示されており、【次元干渉/コスト0】とも言い換えられる。 妨害されなければ毎ターン1点ダメージ与えることができ、特に除去手段が限られた緑にとっては厄介なユニットになる。 確実にプレイヤーアタックが成功するので、それを条件とするトリガー、インターセプトカードと相性がよい。 手札でオーバーライドをし、Lv3の状態から場に出すか、インペリアルソードがあれば、召喚したターンに1点ダメージを与えることができる。 プリティベルと世界樹の恵みによるサーチが効くため、Lv3にするのも難しくない。 基本的に1ターン限りの使い捨て要員と割り切り、「返しのターンまで生き延びればラッキー」程度の気持ちで殴りに行かせるのも1つの手。 逆に言えば除去さえされなければゲーム終了まで持っていくこともできる。 しかしBPの低さゆえに、サポート無しでは次のターンまで生き残ることが難しい。 一騎当千の神器などで補強しても、基本的に「毎ターンに1点ダメージ」以上のことはできない。 フィールドには影響を及ぼさないため、最終的にダメージレースで押し負ける、という展開になりがち。 「アヴァロンの鍵」のキャラクターの1人。そちらでの能力は「先制/相手の先制を避ける」と、COJと違い防衛戦向けのカードとなっていた。能力名の「聖女の加護」も「アヴァロンの鍵」においてバルキリークララが描かれた戦闘支援カード。こちらもCOJと異なり防御向けのカードである。 アヴァロン時代は攻撃時にパンチラしていたが、今作ではポーズの都合上無しに。 元ネタの「色の役割よりフレイバーを重視したデザイン」になっているが、元々が防衛 カウンター向けのデザインだったため「再現・フレイバー重視が出来ていない」という中途半端なカード。 関連カード 「アヴァロンの鍵」シリーズ由来のユニットカード。 ジャンプー メガジョー 鬼ブル クマゴロウ フィフティニー ユキ・ダルマン KP コメント ※この入力欄は検索枠ではありません。 各書き込みの冒頭のラジオボタンをチェックしてから書き込むと、その書き込みへのレスになります。 ▼全文表示する
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戦場のヴァルキュリア part44-26~31,45~50,63~68,78~79,81~84,87~91,106~110 26 :戦場のヴァルキュリア:2009/02/07(土) 00 13 54 ID Pkq2uv+m0 序章・終章含めて19章。1章1レス+用語解説(これ)で20レスくらいになるかと。 まずは頻出する用語の解説から。 ガリア公国:本作の舞台。連邦と帝国の間に位置し、どちらにも属さない武装中立国家。 第二次ヨーロッパ大戦の最中、豊富なラグナイト資源を狙った帝国の侵攻を受ける。 国民皆兵制度を敷いており、小・中・高・大学で軍事教練が必修。さらに中学校までは 義務教育であるため、国民全員が戦闘の基礎を習得している事になる。 位置的にはオランダ~ドイツ辺りの海沿いだけど、世界地図が現実の物と多少違うので はっきり 「この場所」 とは言い切れない。 東ヨーロッパ帝国連合:通称 『帝国』 ヨーロッパ統一を目指す君主制国家。デカイ。強い。 連邦のみならずガリア公国含む周辺諸国へも侵攻。本作のメイン敵国になる。 大西洋連邦機構:通称 『連邦』 ヨーロッパ西側の共和制国家の集合体。領土は帝国より 狭く(それでもガリアに比べれば超デカイが) 戦車開発等においても帝国に遅れをとる。 秘密条約など、まっとうでない手段によって国土を拡大してきたとも言われる。 第二次ヨーロッパ大戦:征暦1935年に勃発し、ヨーロッパ全土を巻き込んだ戦争になる。 (と言っても帝国と連邦でほぼヨーロッパ全土なんだが) 原因はラグナイト資源争い。 「第二次」 という事は第一次もあるわけで、これもやはり帝国と連邦の戦争だった。 第一次の時もガリア公国は帝国による侵攻を受けているが、独立を守り通している。 ラグナイト:燃料や動力、爆薬から治療薬など何にでもなる鉱物資源。青く発光する。 ダルクス人:数千年前、邪法を使って100の都市と100万の人畜を焼き払ったと伝えられ それを理由に様々な迫害を受けている民族。工業や鉱業などの重労働に就く者が多く (というか迫害ゆえにそういった仕事にしか就けない) 「油くさい」 などと揶揄される。 紺色の髪と伝統的な文様の入った布 (ストール等) の装いを特徴とする。 ヴァルキュリア人:北方より現れてダルクス人を倒し、ヨーロッパを救ったとされる人々。 ラグナイトを原料とする武器を用い、戦闘時には青い光を放って人間離れした能力を 見せたと言うが、現在の認識はほとんど御伽噺か伝説上の存在に近い。 この世界の 「征暦」 はヴァルキュリア人がヨーロッパを平定した年を紀元としている。 27 :戦場のヴァルキュリア:2009/02/07(土) 00 17 23 ID Pkq2uv+m0 【序章:開戦】 帝国との国境近いブルールの街。帝国の宣戦布告を受け、人々はこの先来るだろう 戦火を避けるために街を離れ始めている。 街を去る人々の流れの中、一人逆に街に向かう青年がいた。 川の傍に座って手帳に何か書き出した彼を、見回り中のブルール自警団が拘束する。 ウェルキンと名乗る青年は 「魚のスケッチをしていただけ」 と言い、事実手帳の中は 魚や花、虫のスケッチばかりだったが、自警団分隊長のアリシアは容易には信じない。 自警団詰め所へ連行する途中、ウェルキンに声をかける少女が現れる。 アリシアは、彼女がギュンター将軍の娘、イサラ・ギュンターである事に気づく。 まだ疎開してなかったの? と訊ねるアリシアに、イサラは兄が今日迎えに来る事に なっている、と答える。その 「兄」 が、つまりはウェルキンだった。 驚き、むくれつつも自分の勘違いを謝るアリシア。 昔から自然が好きで、今は首都の大学で学んでいると言うウェルキンは、 「自分も誰かに観察されているかも知れないって事を、覚えておくよ」 と言って笑う。 そこへ帝国の偵察部隊がやってくる。街を去ろうとしていた人々が銃弾に倒れていく中、 アリシアは倒れた自警団員の銃をウェルキンに渡し、戦力に加えて帝国兵を撃退する。 戦いが終わった後、部下の自警団員に倒した帝国兵の遺体を埋葬するように言って、 アリシアは手に持っていたコナユキソウの種を風に乗せた。 街の人を守るには戦うしかない。でも、命を奪い合っていただけではなく、新しい命も この時代に生まれていた事を、戦争が終わって振り返った時に思い出したい。 飛んでいく種の綿毛を見ながら彼女はそう言った。 28 :戦場のヴァルキュリア:2009/02/07(土) 00 17 52 ID Pkq2uv+m0 【一章:ブルール防衛戦】 アリシアと別れ、家に戻ったウェルキンとイサラは使用人のマーサに迎えられる。 身重の彼女をウェルキンは気遣うが、当人は 「もう5人目だから慣れたもの」 と笑う。 そこへアリシアが登場。さっきのお詫び、と渡されたパンは、パン屋に住み込みで 働いているアリシア自身が焼いたものだった。 家に迎え入れられたアリシアは、壁にかけられた一枚の写真を見つける。 写っているのは二人の男性。一人はウェルキンの父、第一次ヨーロッパ大戦の中で ガリアの独立維持に大きく貢献した英雄、ベルゲン・ギュンター将軍(既に故人) もう一人の事を訊ねると、イサラが私の父ですと答える。父は将軍の戦車を設計した 技師だった。でも生まれてすぐに両親は事故で他界してしまい、将軍が養子として 自分を引き取り、育ててくれたのだと言う。 立ち入った事を聞いた、と言うアリシアに、気にしないで下さいと笑うイサラ。 時間を見て辞去しようとするアリシアをウェルキンが送っていく。 「お父さんの様に軍人にはならないの?」 と言うアリシアの問いに、ウェルキンは 自分は教師になりたいんだと答える。そして自分なりの方法でこの国を守りたいと。 自分なりの、という言葉にアリシアが考え込んだ時、砲撃音が響く。 ブルールの中心に位置し、街の象徴でもあった親子風車が崩れ落ち、帝国兵が 街に突入してくる。自警団員を集め、敵を食い止めに向かうアリシアとウェルキン。 だが戦車まで加わった帝国側の圧倒的な火力は、自警団の抵抗を物ともしない。 アリシアはウェルキンに脱出するように言い、尚も自警団員を率いて抵抗を続ける。 ウェルキンはまだイサラとマーサがいるはずの家へと向かって走り出した。 29 :戦場のヴァルキュリア:2009/02/07(土) 00 18 17 ID Pkq2uv+m0 【二章:ブルール撤退戦】 家には既に帝国兵が侵入していた。倒れているマーサを庇って立つイサラを見て そのストールから彼女をダルクス人だと知った兵士が侮蔑の言葉を吐く。 そんな兵士達の隙をついて銃を手に取るイサラ。兵士の注意が彼女に向いた時、 ウェルキンが駆けつける。柵の柱を引き抜いただけの即席の棍棒で一人を倒し、 もう一人が応戦しようとした所に銃声が鳴る。引き金を引いたのはイサラだった。 悪態をついて兵士が倒れる。 マーサに駆け寄る二人。既に陣痛が始まっていて動かすのは危険な状態。 そんな時にイサラは納屋に行こうと言い出す。 「父さんたちが残してくれたものが、私たちを助けてくれるはずです」 納屋には一両の戦車があった。イサラの父、テイマーがギュンター将軍のために ただ一両だけ製造したエーデルワイス号。 10年も動かしていない物だが、いつでも動かせるように整備はしてあると言う。 軍事教練で整備を選択し、戦車操縦技能も持つイサラが操縦手兼無線手を担当、 高校で機甲訓練コースを選択していたウェルキンを戦車長兼砲手として、内部に マーサを保護した状態で出撃。 ブルール住民の非難経路を守っていたアリシア達と合流し、帝国戦車を破壊。 時間を稼ぎつつブルールから撤退する。 その間、マーサの子供はなんと戦車の中で生まれてしまっていた。 結局奇襲から2時間足らずで制圧されたブルールを眺めるアリシアとウェルキン。 ウェルキンは、自然から生き物の種族を超えた共存の仕組みを知りたいと言う。 人の生活に活かせるかもしれない。そして教師になれた時それを皆に伝えたいと。 そこへマーサから子供を預かったイサラが赤ん坊を抱いて現れる。 これから離れる故郷を赤ん坊に見せ、きっとここへ帰ってこようと三人は頷き合う。 30 :戦場のヴァルキュリア:2009/02/07(土) 00 18 38 ID Pkq2uv+m0 【三章:ヴァーゼル市街地戦】 ガリア公国東部国境を越えた帝国軍は、要害・ギルランダイオ要塞を始めとした ガリア東部の要所を次々と制圧していく。その中、ブルールを脱出した住民たちは ガリア公国首都、ランドグリーズへと避難していた。 国民皆兵制度に基き、ウェルキンとアリシアは義勇軍として軍に配属される。 ウェルキンは義勇軍第3中隊・第7小隊長に任ぜられる。階級は少尉。 アリシアもウェルキン付きの下士官として第7小隊に配属される。階級は軍曹。 出頭前、アリシアは着慣れない軍服姿の感想をウェルキンに求める。 腰部装甲がカブトムシみたいでかっこいい、とズレた(でも本気の)誉め方をする ウェルキンに呆れるが、頭部のスカーフ(登場時からずっとつけている)について 訊ねられると気を取り直して答える。 パン屋で働いていた時のスカーフである事。その頃の気持ちを忘れたくなくて また働ける時までつけていようと思っている事。 再びパン屋で働ける日が来たら買いに行くよ、とウェルキンは約束する。 義勇軍第3中隊長エレノア・バーロット大尉の下に出頭した際、ウェルキンは 第1小隊長として配属されていた学友、ファルディオ・ランツァートと再会する。 義勇軍としての初戦は、首都近郊の重要拠点・ヴァーゼル橋の奪還。 作戦会議中わざわざ嫌味を言いにきた総司令官・ダモン将軍をバーロットが 皮肉で追い返し、ファルディオは義勇軍を寄せ集めと見下すダモンの態度に 不快感と、ガリア軍が一枚岩でない事への懸念を露にする。 その会議で第7小隊に下された初任務は、ヴァーゼル橋奪還の前段階として 橋の西岸に構築された帝国軍拠点を制圧する事。 小隊に配属された部下、古参の対戦車兵ラルゴや突撃兵ロージー、そして エーデルワイス号の操縦手兼無線手として配属されたイサラ達を率いて 速やかに作戦を完了したウェルキンに、一人の女性が近付く。 従軍記者・エレット。突然の、そして矢継ぎ早の質問にうろたえるウェルキン。 そんなウェルキンを、ラルゴとロージーが冷ややかな目で見ていた。 余談:このゲームは「ガリア戦線記」と言う本を紐解く形で進行していく。 この本の著者が今回登場したエレットである(別名で書いてるけど) 31 :ゲーム好き名無しさん:2009/02/07(土) 00 19 17 ID Pkq2uv+m0 とりあえず今回ここまで。読み易くなってると良いけどどうかなぁ。 このゲーム、クリアした分のイベントは後からいつでも見られるから 詳細の確認が楽でいいw 45 :ゲーム好き名無しさん:2009/02/08(日) 01 00 30 ID Atd01Nkr0 空いてるようなので戦ヴァル第二陣投下します 46 :戦場のヴァルキュリア:2009/02/08(日) 01 00 56 ID Atd01Nkr0 【四章:「春の嵐」作戦】 ヴァーゼル橋の西岸を確保し、橋を奪還する足がかりを得たガリア軍。 次は正規軍との合同作戦で橋そのものの奪還にかかる事になる。 義勇軍に与えられた任務は橋東岸の帝国軍拠点を制圧する事。 しかし橋上には帝国軍の橋頭堡が幾重にも築かれている。 これらを突破する際に、正規軍からの援助はあるのかと訊ねるファルディオに、 バーロット大尉は首を振る。正規軍は、義勇軍が敵の橋頭堡を攻略した段階で 攻勢を開始する。捨て駒扱いに舌打ちするファルディオをバーロットが宥める。 だが彼女自身も、帝国軍の強固な橋頭堡を、被害を抑えつつ突破する方法は 思いつかない。そんな中ウェルキンが橋の偵察を申し出て許可を得る。 そこへアリシアが駆け込んでくる。隊員同士が口論を起こしていて、隊長である ウェルキンに仲裁して欲しい、と言う。 ウェルキンがつれて行かれた先でイサラとロージー、ラルゴが睨み合っていた。 争いの理由は、ダルクス人であるイサラが小隊に参加している事。 ダルクス人なんかと一緒には戦えない、というロージーにイサラが反論する。 口論を止めるウェルキン。 しかしラルゴが、実戦経験の無い坊主の言う事など 誰も聞きやしない、と言う。彼らはウェルキンを隊長と認めてはいなかった。 それを悟ったウェルキンはラルゴに賭けを申し出る。 これから48時間以内にヴァーゼル橋を奪還する。失敗したら隊長を辞任しよう。 「その代わり作戦が成功したら、以後は僕の指示をきちんと聞いてくれるかな」 翌朝早く、ウェルキンは小隊を河岸に集めた。そこで発表された作戦の内容は 朝霧に紛れ、橋ではなく河を渡って東岸に上陸し、帝国軍拠点を落すというもの。 戦車は河を渡れないし、歩兵だけでは拠点は落せない、と反論するラルゴ。 ウェルキンは耐水処置を施したエーデルワイス号を潜水させ、河床を走らせて 東岸に渡すと言う。彼は河の植生から、戦車が渡れる場所を割り出していた。 河岸を警備していた帝国兵は、突然河面を割って現れた戦車に蹴散らされた。 防衛線に穴を空けたウェルキンは対岸に合図を送り、歩兵が一挙に河を渡る。 帝国軍拠点を奇襲・制圧した第7小隊は、ヴァーゼル橋の開閉施設をも占拠。 跳ね橋を強引に上げる事によって戦うことなく橋上の橋頭堡を一掃する。 予想以上に上手くいった作戦に、古参兵たちもウェルキンを認め始める。 ダルクス人への偏見という確執は払拭しきれていないものの、現れたエレットの インタビューに、皆の心を繋ぐ橋のような存在になりたいとウェルキンは答える。 47 :戦場のヴァルキュリア:2009/02/08(日) 01 01 16 ID Atd01Nkr0 【五章:クローデンの森の戦い】 ヴァーゼル橋を奪還し、戦線を押し戻したガリア軍。それによって帝国軍は ガリア中部に戦力を集めざるを得なくなる。この動きに応じてガリア中部へと 向かう正規軍と離れ、義勇軍はガリア南部へと移動する。 南部の国境付近を覆うクローデンの森。慣れていなければ歩く事さえ困難な この森に、帝国軍がガリア中部侵攻のために建設した補給基地があるという。 その基地を制圧し、帝国軍の補給線を断つ事が作戦の主目的になる。 バーロットの説明を受けつつも困難な森林戦に気の進まないファルディオ。 対してウェルキンは珍しい植物が見られるかもしれないとワクワク気味。 ファルディオは呆れるが、よく見ていればきっと何かのヒントが隠されている というウェルキンの言葉には納得する。 一方の帝国側。本拠であるギルランダイオ要塞の作戦会議室(だと思う) 帝国準皇太子であり、ガリア方面軍総司令官でもあるマクシミリアンを筆頭に、 セルベリア・ブレス大佐、ベルホルト・グレゴール少将、ラディ・イェーガー少将、 それぞれガリア中部、北部、南部侵攻部隊の司令官が出揃っている。 帝国側も、中部に兵力を集めつつもクローデンの森の重要性は察知しており 南部方面軍の指揮を取るイェーガー当人が直に補給基地へ向かう事になる。 視点はガリア側に戻り、既に森に入った第7小隊。 ウェルキンは自然オタクっぷりを発揮し、悪気なくアリシアに山羊のフンを 渡したりして小隊員に呆れられるが、同時に獣道も発見する。 ロージーが元は酒場の歌姫だったなどの他愛無い会話をしながら進む中、 小隊は戦闘の巻き添えで親を失ったハネブタ (羽生えた豚) の子供を拾う。 子豚を抱き上げるアリシアに、連れて行くかい?とウェルキンは声をかける。 僕達は義勇軍なんだから誰が隊員になったっていい、と。 エーデルワイス号を中心に進む本隊と、獣道を進む分隊に別れて進軍。 分隊が対戦車砲を背後から奇襲して無力化し、本隊は基地に肉薄する。 そこで帝国側にイェーガーが到着するが、彼は状況を見て基地の死守は 無意味と判断。基地から必要な物資を引き上げさせる間、自ら矢面に立って 小隊の侵攻を食い止める。最終的に基地は制圧したものの、イェーガーの 指揮する戦車の堅牢さや、その鮮やかな撤退にウェルキンは舌を巻く。 余談:拾われた子ハネブタはハンスと名付けられ、小隊の一員となる。 階級は三等兵(アリシアが勝手に任命) 小隊員に可愛がられつつも ラルゴとのぶつかり稽古とか、訓練(?)もちゃんとしているそうな。 48 :戦場のヴァルキュリア:2009/02/08(日) 01 01 42 ID Atd01Nkr0 【六章:砂漠の遭遇戦】 今度はガリア中部のバリアス砂漠に派遣された義勇軍第3中隊。 荒れ果てた大地は、ダルクスの災厄で焼き払われた都市の跡だという。 あまりの景色に、災厄の規模と力の大きさを実感する小隊の面々。 この砂漠にある遺跡の周辺に、帝国軍が布陣していると言う情報があり その真偽の確認と、事実だった場合は帝国軍の目的の調査が任務となる。 一方また帝国側。場所はやはりギルランダイオ要塞内の作戦会議室だが いるのはグレゴールとイェーガーの二人のみ。マクシミリアンとセルベリアは バリアス砂漠へ赴いていた。セルベリアを伴って行ったのならば、理由は ヴァルキュリアに関わる事だろうと推測するイェーガー。一方グレゴールは マクシミリアンがヴァルキュリアの力に固執気味である事を懸念する。 対し、イェーガーは力があるならそれだけ道のりは短くなるだろう、と言う。 我が故国のためにも、マクシミリアンには勝ってもらわなければ、と。 再び舞台はバリアス砂漠。発見した帝国軍と交戦に入る第7小隊。 地溝や岩、砂嵐など周囲の環境を利用して帝国軍の拠点を制圧する。 向かった遺跡の前でファルディオと遭遇。大学で考古学を学んでいた彼は 遺跡内部の偵察と調査とを任されていた。彼は、この遺跡は何千年も前に ヴァルキュリア人が作った物だと説明する。聞き入る小隊の皆を尻目に、 一人考え込んでいたウェルキンが突然 「思い出した!」 と大声を上げる。 「ツノオウムガイだ! この遺跡、ツノオウムガイに似てるんだ!」 またか、と呆れるアリシア。 何事も無かったように聞き流して、ファルディオは遺跡内部に入っていく。 ウェルキンとアリシアは、小隊員に周辺の偵察を任せて彼に同行する。 そのころ、当の遺跡の最深部にはマクシミリアンとセルベリアがいた。 青い光を身に纏ったセルベリアに応じ、遺跡の壁にあった古代の文字が 同じ光を以って浮かび上がる。マクシミリアンの問いに答えるセルベリア。 「大地を焼きし 『聖槍』 は、ランドグリーズの地に封じられたり」 頷くマクシミリアンに、どう制御なさるおつもりですか、と訊ねるセルベリア。 マクシミリアンは答える。槍を載せて走るネズミがもうすぐ完成する、と。 「これで我が野望は、夢から確信へと変わった。余は、ヨーロッパに 君臨する王となるのだ」 余談:イェーガーはかつて帝国に併合された小国・フィラルドの出身で 故国の復興・独立を目指してマクシミリアンの幕下に加わっている。 49 :戦場のヴァルキュリア:2009/02/08(日) 01 03 00 ID Atd01Nkr0 【七章:バリアスの決戦】 遺跡の内部に入る三人。壁面には古代の文字で何かが綴られている。 ファルディオの解読で、この地を襲ったダルクスの災厄を語る文だと分かる。 そしてダルクス人を倒し、ヨーロッパを平定したと言うヴァルキュリア人。 ファルディオの解説を聞きながら、御伽噺だと思っていた、と言うアリシア。 その頃遺跡の外では再びロージーとイサラの衝突が起きていた。 ラルゴの制止で騒ぎには至らなかったが、二人の態度は和解には程遠い。 遺跡調査組は遺跡の最奥部、ヴァルキュリア人のシンボルとも言われている “ヴァルキュリアの螺旋” の前に辿り付く。ここまでただ一人の敵兵にさえ 出会わなかった彼らは、調査を切り上げて外へ戻ろうとする。 その時、突然 “ヴァルキュリアの螺旋” がまるで扉のように開いた。 “螺旋” の前に立っていたアリシアは、ただ手を触れただけだと言う。 遺跡に深部があった事に驚くファルディオ。一行は調査を続けようと奥へ入る。 “螺旋” の先は下へと続く螺旋階段。壁面にはやはり文字が刻まれている。 文字に目を走らせ、愕然とするファルディオ。ウェルキンが内容を訊ねるが、 ファルディオは僅かに間をおいて、ここの文字は自分にも読めない、と答える。 アリシアが気配に気づく。こちらを認めながらも悠然とすれ違って行くのは マクシミリアン。彼の正体に気づく一行。アリシアは銃を抜いてその背中に 照準するものの、彼に付き従うセルベリアが身に纏う青い光に気圧される。 相対したのがヴァーゼルやクローデンの戦いで巧みに帝国軍を破ってきた ウェルキン・ギュンターの隊だと知ったマクシミリアンは、外で雌雄を決しよう、 と言って出て行く。 外に出るとマクシミリアン自身が搭乗する巨大戦車・ゲルビルが現れる。 ガリア側の拠点を、制圧どころか蹂躙しながら進む戦車に手を焼く第7小隊。 ファルディオの第1小隊は、これもやはりセルベリアの部隊に圧倒される。 ゲルビルのラジエーターを破壊しつつ食い下がるが、遂に第1小隊を退けた セルベリアが敵援軍として現れる。銃ではなく、石製にも見える槍と盾を携え 青い光を纏うセルベリア。その姿は伝説のヴァルキュリア人を連想させる。 彼女の猛攻をかわしつつ何とかゲルビルを破壊する第7小隊。 しかし、あろうことか生身に槍と盾で戦車砲すら弾き返すセルベリアを前に、 マクシミリアンを捕える事は適わなかった。 何とか帝国軍を退けはしたものの、受けた被害の大きさと目の当たりにした セルベリアの強大な力に、誰もが暗澹たる思いを抱くのだった。 50 :ゲーム好き名無しさん:2009/02/08(日) 01 06 55 ID Atd01Nkr0 やっとヴァルキュリア登場したところで今回ここまでー 63 :ゲーム好き名無しさん:2009/02/11(水) 00 54 59 ID fL/xt6B40 戦ヴァル第三段いきまーす 段々長くなってきた 64 :戦場のヴァルキュリア:2009/02/11(水) 00 57 33 ID fL/xt6B40 【八章:森林の包囲網】 バリアス砂漠から帰還する途中、突然の砲撃を受けてウェルキンとアリシアは 小隊から逸れてしまう。二人は小隊との合流を目指して夜の森を歩き出すが、 アリシアは脚を捻っており、ウェルキンの知識で森から薬草を得ながら進む。 警戒網を抜けた先に無人の山小屋があった。薬草での応急治療を施す中 アリシアは、なぜ自然に興味を持つようになったのかをウェルキンに訊ねる。 父さんの影響だと思う、とウェルキンは答える。父とよく遊びに行ったと。 父は悩んでいた。母は戦火で命を落とし、最愛の人すら守れなかった父は それでも周囲からは英雄と称えられ続けた。自分は何のために戦ったのか、 いつも苦しんでいた。でも、自然の中にいる時は明るくて元気な父だった。 「父さんを笑顔にしてくれるから、僕は自然を好きになったのかもしれない」 山小屋に一人の帝国兵が入ってくる。銃を構え、制止するウェルキン。 だが、そのままその場に倒れる帝国兵。負傷兵だと気づいた二人は何とか 手当てを試みるが、手の施しようがない。帝国兵は手を伸ばし、母を呼ぶ。 手を握り、大丈夫、ここにいる、と言ってやる事しかできないアリシア。 二人の見守る中で、負傷の帝国兵は息を引き取った。 一方、残された小隊の面々。二人を探すラルゴとロージー、捜索に参加せず エーデルワイス号の整備にかかりきりのイサラ。こんな時によく整備なんか していられるな、と言うロージーに、こんな時だからです、とイサラは答える。 いつ兄が帰ってきてもいいように準備を整えておく事が、今の自分にできる 最良の事だと思います、と。驚いた顔のロージーと、イサラを気遣うラルゴ。 翌朝、帝国兵を埋葬したアリシアとウェルキン。彼の銃を立て、ヘルメットを 置いた墓を前に、帝国兵も自分たちと同じ人間で、家族がいる事を実感する。 自分には家族がいない事を告白するアリシア。孤児院育ちで親を知らない。 でも悲しませる人がいないのなら、一人ぼっちも悪くないかも、と笑う彼女に 今は僕もイサラも、小隊の皆が君の家族じゃないかと言うウェルキン。 そこへ帝国の兵士と、士官が現れる。墓と、山小屋内の治療を跡を見て、 彼らは二人に感謝を述べ、危害を加えることもなく去っていく。 その後二人は近くで交戦中だった小隊と合流して帝国側戦力を撃退する。 二人を敬礼で迎える小隊員。ラルゴとロージーに、兄を探してくれた事への 礼を言うイサラ。ロージーはダルクス人に礼を言われても嬉しくない、と ソッポを向くが、それが単なる照れ隠しなのは傍目にも明らかだった。 65 :戦場のヴァルキュリア:2009/02/11(水) 00 58 20 ID fL/xt6B40 【九章:七月事件】 日頃の戦果が認められ宮殿の晩餐会に招かれたバーロット、ウェルキン ファルディオの三人。ガリア公・ランドグリーズ家の現当主は弱冠16歳の コーデリア姫。彼女はヴァルキュリアの血を引いているとも言われていた。 前部中央にそびえる塔のため、一角獣に形容されるランドグリーズ城。 晩餐会は、ガリアと連邦の同盟を発表するためのものだった。 中立の国是を覆す同盟は、宰相ボルグと連邦大使の握手で締結される。 交わされる握手を表情もなく見る姫。ボルグと連邦大使が口を揃える、 ヨーロッパを我らの手に、という言葉に国を守りたいだけの義勇軍との 思いの剥離を覚える。不愉快な茶番だとファルディオは先に帰ってしまう。 晩餐会が終了し、帰ろうとしたところでバーロットが何者かとぶつかる。 翼を模し頭を覆う白の冠物に一角獣の額冠。なんと相手はコーデリア姫。 咎める様子もない姫に、ウェルキンは同盟に賛成なのですかと訊ねる。 晩餐会を見て姫の意思が無視されているような気がした、と。 姫は答える。国政は宰相に任せている。ガリアの地と、ヴァルキュリアの 血統を守るのが私の宿命。私の意思は必要ない。自らを傀儡と認め、 それを是とするコーデリア姫に言葉を失うウェルキン。 城を出るとダモン将軍が飛んでくる。姫が連邦大使に誘拐されたと言う。 一方、深夜の整備場。ガリア軍兵器の整備・開発を担当しているリオンと クライスが一機の飛行機を発見する。そしてそこにはイサラの姿が。 小さい頃空を飛びたいと言っていた兄の夢を叶えたくて、休日に少しずつ 作っていると言う。手伝いを申し出た二人に、イサラは礼を言って快諾。 そこに緊急出撃のサイレン。すぐにエーデルワイス号を出す事に。 逃走する装甲車を止め、なんとか姫を救出する第7小隊。助出された姫に いかに宿命が重くても、自身の意思を捨てないで下さいと言うウェルキン。 頷くコーデリア。 後日、ウェルキンは勲功賞を授与される。 授与の席でコーデリアは言う。まだ答えが出た訳ではないが、あれから ガリアの姫として、一人の人間としてどう生きるかを、ずっと考えていると。 小隊長室に戻ったウェルキンはファルディオの訪問を受ける。 ファルディオは今回の事件がボルグの圧力で報道されていないと言う。 帝国だけで手一杯の現状、連邦とまで事を構える訳には行かないからだ。 いかにガリアが弱い立場なのか思い知ったと言うファルディオ。更に軍さえ 一枚岩ではない。この国は大丈夫なんだろうか、と彼は懸念を口にする。 66 :戦場のヴァルキュリア:2009/02/11(水) 01 00 56 ID fL/xt6B40 【十章:ファウゼン解放戦】 ガリア北部の工業都市ファウゼンの奪還に当たる事になった義勇軍。 ラグナイト産地であるファウゼンを奪還できれば国内の生産力を回復できる。 帝国軍が防衛に配備した装甲列車・エーゼルの破壊を任される第7小隊。 ファウゼンでは帝国によって狩り集められたダルクス人たちが、強制労働に 従事させられている。そのダルクス人の中に義勇軍の協力者がいるらしい。 そこでまたロージーとイサラの言い合い。ラルゴの仲裁も板に付いてきた。 夜陰に乗じてファウゼンに潜入し(戦車で潜入も何もないだろうとも思うが) 辿り着いたダルクス人収容所で小隊が見たのは、家畜のように扱われている ダルクス人たち。彼らのリーダーであるザカが、義勇軍の協力者だった。 目の当たりにしたダルクス人の現状に動揺しつつも、やはりダルクス人との 共同戦線は面白くないロージー。それを察したザカは好きなものはあるかと 彼女に尋ねる。意図を量りかねながらも、歌が好きだと答えたロージーに、 良いね、俺も好きだよと言うザカ。歌にも色々な物がある。それぞれ違うが、 それぞれ良さがある。人間も人種も、それと同じなんじゃないのか、と。 翌朝に作戦開始。装甲列車エーゼルはファウゼンの渓谷に掛かる高架上。 ザカが高架の支柱に爆弾を設置し、彼の退避を待って起爆する。 装甲列車エーゼルは高架と共に渓谷へと落下。エーゼルに搭乗していた 帝国軍北部ガリア侵攻部隊司令官ベルホルト・グレゴールも運命を共にした。 勝利した小隊に突如知らせが入る。帝国軍が、ダルクス人たちの宿舎に 火を放ったと言うのだ。駆けつけた小隊の前には焼け落ちた宿舎の跡だけが 広がっていた。黒焦げの残骸に歩み寄るロージー。彼女の目に映ったのは、 残骸の中、煤に汚れて落ちている人形。昨夜、宿舎で会った幼い少女が 手にしていた物だった。思わず人形を拾い上げ、復讐を叫ぶロージー。 その彼女を制止したのは、多くの同朋を宿舎ごと焼き殺されたザカだった。 暴力は暴力を呼ぶ。それでは争いは終わらない。例え迫害されていようと、 俺達は誇りをもって生きている。報復はしない、それがダルクス人の生き方だ。 そう言って一人残骸に入り、焼け崩れた柱を片付け始める。無言のまま 手伝いに進み出るイサラ。そして、そんな二人をロージーが手伝い始める。 ファウゼンを奪還し、帰還した第7小隊。開放されたダルクス人達の行く末を 案ずる彼らの前に義勇軍の軍服を纏ったザカが現れる。今日から義勇軍に 入り、しかも第7小隊に配属されたと言う。戦車兵の実戦経験もあるという 彼を加え、第7小隊にも二両目の戦車がやってくる事となった。 67 :戦場のヴァルキュリア:2009/02/11(水) 01 03 34 ID fL/xt6B40 【十一章:マルベリー攻略戦】 今度の戦場はガリア北部のマルベリー海岸。砂浜の奥には断崖があり、 道も狭い上に断崖には銃座が設置されている、鉄壁ともいえる陣である。 明日は精霊節(大事な人に贈り物をする日)だというのに気が重くなる一同。 サロンで休憩中のラルゴとロージーに、イサラがある物を差し出す。 ファウゼンの収容所でも見た人形。それはダルクスに伝わるお守りだった。 それを二人に渡したいと言うイサラ。何で俺らに? とラルゴは尋ねる。 お二人と、ずっと仲良くなりたかった、と言うイサラ。精霊節にあやかって 大切なお二人と親しくなれればと思った、と。照れながら受け取るラルゴ。 だが、ロージーはそれを断る。ラルゴが宥めようとするが逆効果。むしろ はねつけるような言葉が飛び出してしまい、イサラは俯いて去ってしまう。 翌日、精霊節であり作戦当日。遅れて小隊長室に飛び込んで来たイサラは 煙幕弾が完成した、と言う。朝まで寝ないで作っていたらしいイサラは言う。 「私、第7小隊の皆が好きです。誰一人……死なせたくないんです」 小隊は煙幕によって銃座を無力化し、海岸の帝国軍拠点を制圧する。 戦闘が終わった後、いつも通りエーデルワイス号の点検をしているイサラに ロージーが近づく。その手にあるのは、昨日イサラが渡そうとした人形。 役に立ったよ、と言うロージーにイサラは驚く。持っていてくれたんですか、と。 お返しをしなくちゃな、というロージー。イサラは少し考えてから答えた。 「歌が好きだって仰ってましたよね。ロージーさんの歌、聞いてみたいです」 驚きながらも、分かった。約束するよ、と自分から手を差し出すロージー。 響く銃声。 イサラが倒れる。 他の小隊員が応戦する中で一人反応できないロージー。 「アタイ……まだアンタに、ありがとうを言えてないじゃないか!」 伸ばされた手を握る。「握手……できました、ね」 微笑むイサラ。 小隊の反撃に撤退していく帝国兵。皆がイサラとロージーに駆け寄る。 抱き起こすウェルキンに、一緒に飛行機で空を飛びたかった、と言うイサラ。 きっと一緒に飛べるさ。そう言った兄に微笑みかけて、ゆっくりと目を閉じる。 後日、戦没者墓地。ダルクスのストールを掛けられた真新しい墓に向かって 敬礼する義勇軍の面々。皆で彼女の願いを受け継ぎ、叶えていく事を誓う。 進み出たロージーが、約束していた通りに、墓前に歌を捧げる。 歌声は風に乗って、青空へと昇っていった。 68 :戦場のヴァルキュリア:2009/02/11(水) 01 04 42 ID fL/xt6B40 今回ここまで。 ベルホルト・グレゴール少将、小隊への顔見せたったの一度で御退場 将軍クラスの敵さんの中ではぶっちゃけ一番影が薄いと思う 78 :ゲーム好き名無しさん:2009/02/12(木) 21 59 00 ID nwb90YY40 戦ヴァル第四段投下。今回ちょっと断章が入ります。 本筋とはあまり関係の無いエピソードが幾つか断章として出てくるんですが 今回のこれはちょっと入れないと話がわからなくなるので。 79 :戦場のヴァルキュリア:2009/02/12(木) 21 59 39 ID nwb90YY40 【十二章:ブルール奪還戦】 イサラを喪って三週間が過ぎた。第7小隊に与えられた新たな任務は、 バーロットがダモン将軍に上申し、許可を得たものだと言う。国境近くの街 ブルールの奪還。今は欠員となっているエーデルワイス号の操縦士として 整備開発部で働き、イサラとも顔なじみだったクライスが志願、配属される。 五ヶ月ぶりに戻ってきた故郷・ブルール。必ず帰ってこようと誓った場所だが 共にそれを約束したイサラは既にいない。しかし将軍に上申してまで今回の 攻略目標をブルールと決定したバーロットの気遣いを無駄にしないためにも 今はイサラの、そして自分達の故郷を取り戻そうと決意するウェルキン。 一方、今回の作戦に参加しないファルディオは、バリアス砂漠の遺跡にいた。 あの時 “螺旋” の奥にあった文字を「読めない」と答えたが、実は読めていた。 濁してしまったのは内容があまりに衝撃的だったためだ。そしてその内容故に “螺旋” をヴァルキュリア人だけが開ける門なのだろうと結論するファルディオ。 ならばそれを開いたアリシアは…… ファルディオは苦悩する。自分は一体どうするべきなのか。 ブルールを奪還した第7小隊。初めて出会った丘から街を見渡すウェルキンと アリシア。住民も少なく、親子風車も壊れたままの街に寂しさを覚える。 ふと、小さな白い花を見つけたウェルキン。アリシアを呼び、見せたそれは コナユキソウの花だった。二人が出会った時にアリシアが捲いた種が根をはり 花を咲かせていた。「新しい命も、この時代に生まれている」 実感する二人。 ブルールの奪還で目標を再確認したウェルキン、中隊に戻ったファルディオに バーロットはガリア北東部の平原・ナジアルに帝国軍が結集していると告げる。 この戦がガリアの運命を決めると予想し、休息の後ナジアルへ移動する事に。 その夜。丘の上のエーデルワイス号と、その上に座るウェルキンとアリシア。 またたくさんの命が喪われる、と言うアリシアに頷くウェルキン。喪ったものは 戻らない。でも、アリシアが教えてくれたように、新しいものを育むことはできる。 次の戦いで勝てれば戦争も終わりに近づく。そうしたらブルールを復興しよう。 自分にとっての、お互いの存在の大きさを確認しあう二人。アリシアは言う。 「この戦いが終ったら……あなたに、伝えたい事があるの」 余談:ブルールを奪還した時点で、エレットが発行している壁新聞に ランドグリーズ大学からヴァルキュリアの槍と盾と考えられていた 古代の遺物2点が盗まれたという記事が載る。 81 :戦場のヴァルキュリア:2009/02/12(木) 22 00 20 ID nwb90YY40 【十三章:ナジアル会戦(前編)】 ガリア・帝国両軍の主力部隊が集結するナジアル平原。 総兵力で帝国軍に大きく劣るガリア軍だが、総司令官ダモン将軍はコネ就任の ダメ司令っぷりを発揮して総攻撃を命令。バーロットの諫言など意にも介さない。 待機中の第7小隊。帝国軍の大兵力を前に、空気は重い。そんな中で、自分の 身の上を話し出すアリシア。ずっと一人ぼっちだと思っていた。でもウェルキンが 第7小隊の皆が私の家族なんだと言ってくれた。戦いの前は、やっぱり怖い。 「……でも、家族が一緒にいてくれるって考えると、頑張れる気がするんだ」 その言葉に小隊はいつもの明るさを取り戻し、戦いに臨む覚悟を新たにする。 一方帝国側。ガリア軍を蹴散らし殿下をランドグリーズへ、と息巻くセルべリア。 物心つかぬ内から実験施設に送られ、兵器として実験材料にされていた彼女は 初めて自分をそこから連れ出し、人間らしい生活を与えてくれたマクシミリアンに 絶対の忠誠を誓っていた。彼のためにヴァルキュリアとしての力を覚醒させようと 自ら胸を貫きさえした。 「必ずや、余に勝利をもたらせ」 というマクシミリアンの 言葉を受け取って、セルベリアが出撃する。 古代の石槍・石盾を手に陣頭に立つセルベリア。全身から青い光を放って 無謀な全面攻勢をかけるガリア軍を蹂躙する。戦車ですら足止めにもならない。 第7小隊の担当区域は離れているものの、帝国軍は区域全体にロケット砲での 砲撃を加えており、これを避けようの無い戦車は出撃ができない。 前大戦の名残でもある幾多の塹壕を通って、まず砲撃の照準情報を送っている 中間拠点を制圧。砲撃が止んだ所でウェルキン&クライス、ザカの戦車が出撃。 だが同時に、他区域のガリア軍を撃滅したセルベリアが現れる。 やはりセルベリアに対しては勝機が見出せない小隊。セルベリアにこちら側の 本拠点を制圧される前に帝国側の拠点を制圧する事で、なんとかセルベリアを 退かせる事に成功する。だが、ガリア軍側にできたのはたったのそれだけ。 ヴァルキュリアの力と、あまりに甚大な被害に呆然とする一同。 帝国軍が撤退したとは言え、このままでは拠点を維持する事も難しいと判断した ウェルキンは、後方部隊に支援を要請しようとする。応じてアリシアが小隊員を 集めようとしたとき、一発の銃声が暗天を貫いた。その場に倒れるアリシア。 ウェルキンが駆け寄り、小隊は警戒体勢に入るが帝国兵の姿はどこにもない。 82 :戦場のヴァルキュリア:2009/02/12(木) 22 00 59 ID nwb90YY40 【十四章:ナジアル会戦(後編)】 撤退した第7小隊。幸い急所は外れていたもののアリシアは意識不明の重体。 治療所のテントを出ようとするウェルキンに衛生兵が声をかける。人目を避けての 報告は、アリシアの体内から摘出された弾が帝国軍のものではなく、ガリア軍の 狙撃銃のものだった、というもの。しかもまだ一般兵には渡っていない新型銃弾。 つまり、彼女を撃ったのは味方である可能性があるという事だった。 ガリア軍の作戦会議室。兵士を役立たずと罵るダモン将軍。ここは一旦退いて ヴァルキュリアへの対策を、というバーロットの言葉は相変わらず無視される。 退けば自分の指揮能力を疑われる、というだけの理由で、ダモンは明日正午に 再び帝国軍陣地に総攻撃を加えよと命令する。このままではガリア軍は全滅。 どうしたらいいの、と呟くバーロット。 治療所のテントに踏み込む人影がある。眠るアリシアの胸元に置かれるのは 巻貝にも似た螺旋状の石槍。石槍が放った青い光がアリシアを包んでいく。 再び帝国軍の陣頭に立つセルベリア。ヴァルキュリアの光にたじろぐガリア軍。 その背後から一人の少女が進み出る。茶色の髪を銀に、茶色の瞳を赤に染め、 光を纏ったアリシア。髪も瞳も光も、全ての色がセルベリアと酷似している。 もう一人のヴァルキュリアの存在を知ったセルベリアはアリシアに戦いを挑む。 応じるアリシアは、意識も無いのか頼りなくふらつく足取りでガリア軍の前へ。 だが、瞳の焦点すら合っていないアリシアはあっさりとセルベリアを下す。 続けて、やはり無意識のまま帝国軍の戦車や銃座を破壊していくアリシア。 小隊は拠点を制圧するが、アリシアは途中で力を使い果たしたように倒れ、 気を失う。すぐに彼女を回収し退避させるウェルキン。 その時、戦場の両端に帝国の戦車と歩兵の増援が現れる。敵の挟み撃ちに 遭いながらも、何とか両戦車を破壊する第7小隊。 もう一人のヴァルキュリアの出現という予期せぬ事態で、大きな戦力差を覆し 勝利を収めたガリア軍。しかし、アリシアは何があったのかを覚えていない。 傷は何時の間にか治ってしまっているし、周りの人の態度がいつもと違う。 自分に何があったのかを尋ねられ、どう答えていいか分からないウェルキン。 余談:ここで章は切れてるけど、後の会話を見るにどうやら説明はした模様 83 :戦場のヴァルキュリア:2009/02/12(木) 22 01 36 ID nwb90YY40 【断章:決別】 ウェルキンの元にクライスがやってくる。携えてきたのは先日の弾丸と、その 出所の調査結果。やはり結果はガリア軍で開発中の新型狙撃銃の弾丸。 そしてその銃を事件前夜に借出した者がいる、という記録。記録にある名は ファルディオ・ランツァート少尉。驚くウェルキンの前に並べられる情報は しかし全てがファルディオへの疑惑を裏付けるものばかり。 信じたくない思いでファルディオの部屋を訪ねるウェルキン。留守の部屋内で ウェルキンが見たのは、所狭しと並ぶヴァルキュリア人関連の文献・研究書。 そして机の上にあるメモ。 アリシアをヴァルキュリア人と断じたファルディオが、彼女を覚醒させるための 計画の概要をまとめ、それを実行した事を告白するものだった。 ヴァルキュリア人としての力に覚醒するには、命に関わる傷を負うことが条件。 親友の恋人を撃ったことを後悔した。しかし、今はこれでよかったと思っている。 そう、メモは締めくくられていた。 ファルディオはバーロットに呼び出されて行った、と聞いたウェルキン。 中隊長室に入るなり当人に疑惑をぶつける。言い訳もなく認めるファルディオ。 そんな彼をウェルキンは殴り胸倉を掴む。何故アリシアを撃った、という問いに ガリアのためだ、と答えるファルディオ。アリシアの力が無ければ勝てなかった。 今だけの事じゃない。二つの強国の狭間にあるガリアが生き残っていくには ヴァルキュリアの力が、切り札が必要だ。 ウェルキンはその言葉を否定する。 強い力を持っても戦争は終らない。相手がそれ以上の力を持とうとするだけだ! 二人の争いをバーロットが止める。きっとどちらの言う事も間違いで、どちらの 言う事も正しい。だが、いかなる理由があろうと仲間を撃った罪は許されない。 軍規に基づきファルディオは逮捕監禁。 ウェルキンには私闘を行った罪で独房24時間収監が言い渡される。 余談:メモに遺跡の “螺旋” の奥の壁に書かれていた内容も記されている。 「ダルクスの災厄」の真実。実は災厄を振りまいたのはヴァルキュリア人で この地の先住民だったダルクス人を焼き払い、平定した後にその責任を 敗者であるダルクス人に転嫁した。以来、ダルクス人は呪われた民となり ヴァルキュリア人は救世主となった──というもの。 他民族には偽の歴史を、ヴァルキュリア人だけに真実の歴史を伝えるため バリアスの遺跡が作られたものと思われる。 84 :戦場のヴァルキュリア:2009/02/12(木) 22 03 28 ID nwb90YY40 今回ここまで。 断章は他にもあって、中には戦闘が起きるものもあり。 小隊の休暇風景だったり、ラルゴが野菜のために戦車を破壊する話だったり バーロットが前大戦での因縁の相手に復讐をはたそうとする話だったり ダルクス狩りの帝国軍を倒す作戦をロージーが進んで受ける話だったり あとはまぁ、アリシアとウェルキンが仲良くしてる話だったりと色々。 87 :ゲーム好き名無しさん:2009/02/14(土) 08 13 25 ID GMNM86TZ0 連続でしかも朝っぱらから戦ヴァル投下。 今回分で終るかと思ったら終らなかった。 88 :戦場のヴァルキュリア:2009/02/14(土) 08 14 22 ID GMNM86TZ0 【十五章:ギルランダイオ要塞戦】 国境のギルランダイオ要塞が、ガリアにおける帝国最後の拠点となった。 要塞へ通じる輸送線路に、爆薬を載せた車両を走らせて要塞正門を爆破する、 そのために線路のポイントを切り替えろという命令が義勇軍に下る。 帝国側。どうか今一度機会を、殿下の為に戦わせて下さいと言うセルベリアに マクシミリアンは告げる。この地に集ったガリア軍の主力を、ヴァルキュリアの “最期の炎” をもって殲滅せよ。愕然とするセルベリア。 ランドグリーズから使者が来ている、と言うイェーガーに、待たせておけと言い 一度本国に戻る、と言うマクシミリアン。膝をつくセルベリアに振り向かぬまま マクシミリアンは去る。彼女を一瞥し、すまん、と呟いてイェーガーも出て行く。 探しに来たウェルキンを前に無理に明るく振舞うアリシア。コナユキソウの花を ウェルキンの胸元に挿し「いい感じだよ」と笑うが、不意に俯いて縋り付く。 ファルディオの事を聞いた、陣中を歩いていると皆が自分を拝む、と言う。 どうしたらいいのか、これからどうやって生きていけばいいのか分からない、と。 だがウェルキンが答える前に、無理な笑顔を作って逃げるように去ってしまう。 作戦開始。全てのポイントを切り替え、爆弾列車を要塞に導く事に成功すると 城壁上にセルベリアが現れる。ヴァルキュリアとして敗北した上は、人として 戦いを挑むと言うセルベリア。なんとか撃破する小隊。 ヴァルキュリアである事にどうして耐えられるのですか? と尋ねるアリシア。 愛する人がいるからだ、とセルベリアは答える。そこにダモン将軍が現れる。 セルベリアは捕虜となった部下には手を掛けないで欲しい、そしてできれば 彼らの護送を義勇軍に頼みたい、とダモンに願い出る。了承するダモン。 連行の直前、セルベリアはアリシアに言う。私は自分の人生に答えを出した。 もう会うことも無いだろうが、お前がどういう答えを出すのか興味がある、と。 司令官の椅子にご満悦なダモン。その前に捕らえられていたセルベリアが 突如戒めを引き千切る。驚いたダモンは即座に兵士に射殺を命じた。 そして、ヴァルキュリア人が死ぬ瞬間に発動される、最期の炎が要塞を包む。 「マクシミリアン様……どうか、栄光をその手に!」 ガリア軍主力の全てを巻き込んで、ギルランダイオ要塞は吹き飛んだ。 捕虜護送のため要塞を離れていた義勇軍中隊の中、アリシアは呆然とする。 これがセルベリアの出した答えなのか。更ににそこへ緊急入電。正体不明の 巨大兵器がクローデンの森を突破して、首都ランドグリーズへと向かっている。 89 :戦場のヴァルキュリア:2009/02/14(土) 08 15 33 ID GMNM86TZ0 【十六章:「乙女の盾」作戦】 森を破壊しながら首都ランドグリーズへ進む巨体。既に戦車ですらないそれは 帝国軍の陸上戦艦・マーモット。その艦橋でギルランダイオ要塞とガリア軍の 主力部隊消滅の報告を受けるマクシミリアン。表情には何の感動も無い。 義勇軍は首都防衛大隊と共同でマーモットを枯れ谷へと誘い込み、地雷原に 誘導した上で首都防衛大隊の火力をぶつける作戦に出る。 考え込むウェルキンに物言いたげなアリシア。だが結局彼女は何も言わない。 首都ランドグリーズ。報告を受けたコーデリア姫は自ら出陣する意思を固める。 だがそれを阻む者がいた。宰相ボルグ。姫の身を「大事な取引材料」と評する ボルグをコーデリアは睨み付ける。この国を帝国に売り渡すつもりか、と。 ボルグは、ガリアは新たな国に生まれ変わると言う。それも己が統治の下で。 一方の義勇軍側。爆薬で崖崩れを起こし、マーモットの進路を誘導する事には 成功するものの、ガリア軍全火力を以ってしてもマーモットには歯が立たない。 そんな中、崩壊する戦線を悠然と突っ切るマーモットの前にアリシアが立った。 思わずエーデルワイス号を飛び出し、彼女の下へ走るウェルキン。 再びヴァルキュリアの色と光を纏ったアリシアは、マーモットの砲撃を掻い潜り 右手の石槍を投擲。槍はマーモットの装甲を易々と貫き爆発を引き起こす。 「私は、ヴァルキュリア……もう、皆と一緒にはいられない……」 炎のように膨れ上がる青い光を纏ってアリシアは歩み続ける。 彼女の姿に不吉な物を覚えるマクシミリアン。マーモットは全速で離脱を図る。 マーモットが回頭していくのを前に、一度は砲撃で吹き飛ばされたウェルキンが ようやくアリシアに追いつく。私が死ねば沢山の人が助かる、と言うアリシアに そんな力で勝ったって本当の勝利じゃない、と叫ぶウェルキン。自分達の力で 掴み取らなければダメだと。でも、私は貴方たちとは違うと言うアリシア。確かに 君は僕達とは違う力を持っている。でもアリシアはアリシアだと言うウェルキン。 そして彼は言う。僕は君を愛している、と。 ギルランダイオ要塞に向かう前に、アリシアが挿してくれたコナユキソウの花を 胸元から抜き、茎で輪を作ってアリシアの左手を取り、薬指に通す。 「戦いが終ったら、一緒に暮らそう。僕はずっと……君と一緒にいたい」 二人の口付けと共にヴァルキュリアの青い光は緑光となって弾け、消えた。 小隊員に冷やかされつつも暖かく迎えられる二人。 全員が揃った第7小隊はマーモットを追撃し、首都ランドグリーズへ向かう。 90 :戦場のヴァルキュリア:2009/02/14(土) 08 17 03 ID GMNM86TZ0 【十七章:ヴァーゼル橋突破戦】 首都を目指す義勇軍中隊はヴァーゼル市街に到達。以前西から東へと進軍し 奪還したヴァーゼル橋を今度は逆に渡る事になる。街には帝国軍の戦車隊と 彼らを率いるラディ・イェーガー当人が駆る新型戦車・ケーニヒヴォルフ。 その強固な装甲を何とか破壊し、イェーガーを撃破する小隊。 義勇軍勝利で戦いの終ったヴァーゼル市街地。大破したケーニヒヴォルフを 見上げながら撤退完了の報告を聞くイェーガーは、報告に来たその兵士にも ランドグリーズへ脱出しろと言う。そして、自身はもう帝国には戻らないとも。 自分はマクシミリアンの力に、故国の独立と復興を賭けた。軍事力こそが 国を護るための力だと思っていた。だが本当に必要だったのは故郷や仲間を 思う心なのではないか。イェーガーは兵士にマクシミリアンへの伝言を託す。 「真に強きものは弾丸に非ず。マーモットと聖槍を過信するなかれ」 見送る兵士の敬礼を背に受け、イェーガーは黒煙の中に姿を消す。 ヴァーゼル橋を渡り、やっとランドグリーズへ進撃が可能になった義勇軍に とうとうマーモットが首都に到達、城門を破り城に突入したと知らせが入る。 (本当に街の大通りを驀進して城の前部に艦首を突っ込むという暴虐っぷり) 余談:人物総覧ではイェーガーはこれ以降消息不明、となっている。 マクシミリアンに伝言が伝わったか否かは不明。たぶん伝わってないぽ。 まぁ伝わってても何も変わらなかった気もするが。 91 :戦場のヴァルキュリア:2009/02/14(土) 08 19 19 ID GMNM86TZ0 3将が全員退場して今回ここまで。 次回で終ります。 106 :ゲーム好き名無しさん:2009/02/15(日) 23 45 01 ID 22BytXjO0 戦ヴァル最後投下ー 107 :戦場のヴァルキュリア:2009/02/15(日) 23 45 34 ID 22BytXjO0 【終章:最終決戦】 とうとう帝国の突入を許してしまったランドグリーズ城。コーデリア姫の前に 正装(たぶん)のマクシミリアンが現れる。宰相ボルグは姫の了承も得ずに 無条件降伏・帝国への従属等を申し出るが、マクシミリアンはガリアに 帝国の属国になれとは言わない、という。彼は自らがガリアの大公となり、 ランドグリーズ城に眠る “聖槍” を以って大陸に覇を称えんとしていた。 今も威光衰えぬヴァルキュリアの血統は我が妻に相応しい、とコーデリアに 婚姻を迫るマクシミリアン。その目前でコーデリアは冠物を脱ぎ捨てる。 頬に落ちたのは、セルベリアと同じ銀の髪……ではなく、イサラやザカと同じ 紺色の髪。ガリア公ランドグリーズ家は、ダルクス人の血統だったのだ。 コーデリアは語る。数千年前、北方からの侵略者・ヴァルキュリア人に対して ダルクス人は抵抗した。だがその力の前に次第に追い詰められ、そして遂に ある有力な豪族がヴァルキュリア人に寝返るに至り、ダルクス人は敗北した。 その “ダルクスを裏切った豪族” と言うのが即ち、ランドグリーズ家。 裏切りの褒章として、ヴァルキュリア人からガリアの統治を任されたのだ。 偽りをもって国を統治することに悩み、いつしか考える事も、意思を持つ事も 放棄するようになった。だがある将校と出会って、その過ちに気付かされた。 そう言って、コーデリアは短剣を抜く。だがやはりマクシミリアンは倒せない。 その頃、軍刑務所内のファルディオ。ランドグリーズ城に帝国戦艦が突っ込み そのまま何やら工事をしているらしい、と聞いてすぐにその目的に思い当たる。 こんな所にいる場合ではないと仮病を使って脱獄する。 コーデリアに対し、婚姻証書への署名を強要するマクシミリアン。 そこへヴァーゼル防衛部隊の敗北と、義勇軍中隊進撃の知らせが入る。 そして首都に流れるラジオ放送。人々に希望を知らせるその声は従軍記者 エレットのもの。マクシミリアンはマーモットでの出撃を決意。相も変わらず おべっかを述べる宰相ボルグを「信用できん」として、兵士に銃殺を命じる。 マーモットが動き出す。後退する動きに合わせ、城の前部にあった尖塔が 引き出される。崩れる塔の中から現れたのはヴァルキュリアの石槍。しかし その大きさはセルベリアやアリシアが使った物とは比べ物にならない。 マーモットはその背に巨大な石槍を載せる。そのためのマーモットだった。 “聖槍” の巨大な光はマーモット正面に展開していた義勇軍第4・第5小隊を 消滅させ、大地を一直線に焼き、遥か彼方の山を砕く。 いち早く退避していた第7小隊は、コーデリア姫の援護を受けつつ側面から 機銃の雨を掻い潜ってマーモットに取り付き、何とか “聖槍” を破壊する。 108 :戦場のヴァルキュリア:2009/02/15(日) 23 46 06 ID 22BytXjO0 【終章:最終決戦】 ……の続き 停止したマーモットの機関部を探して上部甲板に登る第7小隊の面々。 その前に立つマクシミリアン。携えるのは機械式のヴァルキュリアの槍と盾。 単身で現れた彼に、なぜここまでして戦う必要があるのかと問うアリシア。 マクシミリアンは答える。己の野望のため、そして帝国に復讐するためだ、と。 帝国皇帝の息子として生まれながらも、母の身分が低いために疎んじられ、 皇位継承を巡る争いによって謀殺されかけた。母を始め多くの人が死んだ。 その時に帝国と、その帝位を奪う事を誓ったのだと。 「余の戦いは、まだ終ってはいない!」 撃破されても敗北を認めないマクシミリアン。人造とはいえヴァルキュリアの 力を持つ彼は、命を賭した “最期の炎” を以って全てを焦土と化そうとする。 だが、突然マーモットからのラグナイト供給が停止し、力は失われる。 動揺するマクシミリアンを背後から捕らえたのは、軍刑務所を脱獄した後に マーモットに潜入し、ラグナイト供給を停止させた張本人・ファルディオだった。 ファルディオはそのままマクシミリアンを甲板前部の縦孔へと引き摺っていく。 仲間を撃った罪滅ぼしだと言い、ウェルキンとアリシアの二人に「幸せにな」 と言い残して、マクシミリアンもろともファルディオは縦孔へ身を投げた。 縦孔から膨大なラグナイト光が吹き上がる。爆発で生じた炎が小隊を分断。 ウェルキンとアリシアは甲板前部に取り残されてしまう。最後の命令として 炎の向こうの小隊員に脱出を命じるウェルキン。二人は何とかならないかと 艦橋部に登るが、それでも炎は迫り、飛び降りるにも大地は遠すぎる。 死を覚悟した二人に、突然空から声がかかった。 見上げた先には一機の飛行機。操縦するのは整備開発部員のリオン。 そして飛び来る機体に書かれているのは、今は亡きイサラの名。 間一髪で救出された二人に、リオンは言う。イサラがいなくなってしまった後 整備員だけでなく、小隊のみんなで少しずつ作り続けていたのだと。 皆に受け継がれ完成されたイサラの飛行機で、二人はガリアの大地に戻る。 109 :戦場のヴァルキュリア:2009/02/15(日) 23 46 38 ID 22BytXjO0 【ED】 この戦いの後、ガリア公国と帝国との間で休戦協定が締結。 終戦と共に義勇軍・第7小隊も解散した。 退役して農業を始めたラルゴ。その彼と結婚したエレノア(=バーロット) 歌姫としてヨーロッパを巡りつつ、イサラの命日には必ず帰国するロージー。 持ち前の技術力を活かしてファウゼンに玩具工房を開いたザカ。 真実を公開しながらもその誠実さで支持を受け、ガリアを統治するコーデリア。 そして惜しまれつつも軍を退役し、ブルールに戻って教師となったウェルキン。 彼の妻としてパン屋を経営するアリシア。その足元にはハネブタのハンス。 アリシアの移動式のパン屋の中には、母を手伝う娘の姿が。 教え子と虫を捕りに行く約束をして帰ってきたウェルキンが娘に声をかける。 「イサラ、いい子にしてたかい?」 エーデルワイス号を背景に、ファルディオやバーロット、もう一人のイサラと 第7小隊の面々が揃った写真が、パン屋のカウンターに飾られている。 -END 110 :ゲーム好き名無しさん:2009/02/15(日) 23 53 53 ID 22BytXjO0 以上で戦場のヴァルキュリア終了 EDのラルゴとバーロットが何か唐突に見えるけど この二人は前大戦の頃兵士として同じ部隊に所属してて ゲーム内でもそこそこ仲が良い&進展してます 断章でしか語られてないから書く機会が無かったけど 次回作の要望とか出てるらしいですが もし出るならフィラルド独立戦線でイェーガーにコキ使われる 小隊長がやりたい俺イェーガー大スキー
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バルキリー ザガン 剣兵 紹介 数少ない範囲持ちの剣士。攻撃力も高め。 Lv70,覚醒,超越12のステータス 戦闘力 45398 B 総合 A HP 7768 B 移動速度 1.2 B 物理攻撃力 196 A 魔法攻撃力 108 B 物理防御力 224 B 魔法防御力 185 C 近距離回避率 0% B 遠距離回避率 30% B 攻撃速度 1 B 射程 1 B CRT率 2% B CRTダメージ 50% B 相性ボーナス 0% B 状態異常抵抗 0% B スキル アクティブスキル(Lv1~最大) [通常]前方の敵に150%~250%の物理ダメージを与える。/CT10秒 [覚醒]前方の敵に250%~450%の物理ダメージを与える。/CT10秒 ソウルウェポン バルキリーソード バルキリーのソウルウェポン Lv0以上 物理攻撃力+45 +最大HP+600 Lv5以上 物理攻撃力+50 +相性ボーナス+12% Lv10以上 物理攻撃力+65 +物理防御力+15 Lv15 物理攻撃力+90 +さらに相性ボーナス+14%
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「俺達韓国人と日本人の共通点を言ってやろうか?」 「?」 「ロクな政府を持っていないってことさ!」 「……政府批判は死刑です」 「どうせこれから死ぬ!くそっ。日本に亡命してやろうか?」 中隊長は小声で毒づいた。 「メサイア手みやげにすれば、そこそこ……」 「ダメですよ」 その声が聞こえたのか、MC(メサイアコントローラー)がうんざりしたという声で言った。 「こんな騎、近衛軍の使う“インペリアル・ドラゴンシリーズ”に比べたらクズですよ」 「……スクラップ代請求されるか?」 「大隊長と師団長が20騎連れて島を大きく迂回、その“インペリアル・ドラゴンシリーズ”が着陸した独島へ」 「その分の戦力をこっちに回せ!」 「そういう―――敵2、戦闘機動開始!」 「全騎、各個にかかれっ!武器使用自由!何としてもあの2騎を突破!島へたどり着けっ!」 ●韓国軍鬱陵島防衛隊司令部 「第二中隊が糖花島(とうかじま)へかかりました」 鬱陵島(うつりょうとう)のほぼ中央に存在する韓国軍鬱陵島司令部の大型モニターには糖花島(とうかじま)へと接近するグレイファントムが白い点として表示されている。 29騎。 数としては申し分ない。 凡そ軍司令部には似つかわしくない革張りのソファーにふんぞり返りながら、黄司令は鷹揚に頷いた。 「よろしい。戦果は?」 黄司令が望んでいるのは、接近しつつあるグレイファントムKAの戦果だけ。 この鬱陵島(うつりょうとう)周辺は、即ち軍管区としては、司令官である彼の持ち場であり、その持ち場での戦果は自動的に彼自身の戦果となる。 横取りなどではない。 立場上、そうなるのだ。 だからこそ、彼はグレイファントムKAがもたらす自らの戦果という“当然の結果”を、どうやって最大限に活かすかを考えながら待っていた。 無謀にも鬱陵島(うつりょうとう)に接近を試みた、愚かな日本軍を撃破。 明日の新聞の見出しはそんなものでいいか? あとは大写しの自分の写真―――いっそ、撃破した日本軍メサイアや戦闘機の残骸と一緒にしたほうがいいか? 子供達を使うのはどうだろう。 次の選挙に打って出るのもいいか。 ―――まぁ、いい。 どちらにしろ、相手が日本軍なら、少なくとも勲章と中央への栄転は確実だろう。 うむ―――いいことだ。 ソファーにふんぞり返りながら、従兵の持ってきた焼酎入りのグラスに手を伸ばした黄司令は、部下の報告がないことに気づき、手を止めた。 「どうした?集計が間に合わないのか?」 「いえ……その」 彼の部下達は、目の前の光景をどう報告してよいのか、本気で迷っていた。 上官の機嫌を損ねれば、あの糖花島(とうかじま)に送られかねないし、実際、彼らの多くが、そうやってこの司令部から去っていった仲間達を見てきたのだ。 「はっきりしろ!」 顔を見合わせる部下達の態度がカンに触った黄司令は、グラスをつかむと部下達めがけて投げつけた。 「俺の機嫌をそんなに損ねたいのか!?イ少尉!」 「い、いえっ!」 名指しされた気の毒な士官が弾かれたように立ち上がると、直立不動の姿勢のまま大声で怒鳴った。 「自分は司令官閣下に忠誠を誓っておりますっ!」 「ならさっさと報告しろっ!日本ブタ共を何匹始末した!」 「―――っ!」 彼は、モニターを確認すると、覚悟を決めた声で怒鳴った。 「既に第二中隊は半数が脱落!糖花島(とうかじま)に上陸出来た騎はありませんっ!」 ガンッ! 鈍い音と、くぐもった悲鳴が司令部に響く。 従兵の持っていた盆を顔面で受けたイ少尉が口元を押さえてのたうち回る。 「誰がそんな報告をしろと言った!」 黄司令はソファーから立ち上がると、床にうずくまったままの部下を、磨き上げた軍靴で蹴り上げた。 「俺の栄光に泥を塗るつもりか!?おい!パク大尉!貴様の指導が悪いせいだ!部下を敗北主義者にしてどうするか!」 「し、しかし!」 「俺の都合のいい報告をしろ!」 「モニターを見てくださいっ!」 司令部でオペレーター任務を担当する兵士達を束ねる立場のパク大尉は、黄司令から見えないように、隠し持った拳銃のグリップを握りながら怒鳴った。 「敵は圧倒的です!戦力が足りませんっ!」 「なっ!」 黄司令は気色ばんだが、 「―――グレイファントムKA201号騎、203号騎反応消失。続いて209号騎が!」 「糖花島(とうかじま)進行速度変わらず!」 「鬱陵島(うつりょうとう)上空までの予想時刻修正、マイナス250秒!」 「く、空軍はどうした!海軍は!」 敵がこの島に接近しつつある。 それだけは黄司令にもわかった。 「空軍の攻撃は!」 「爆装したF-4部隊が再接近中ですが、メサイアをまずどうにかしないと」 「たるんでいる!」 「……」 「島の全部隊に動員を!」 「黄同士」 黄司令の背後に、ずっと無言で立っていた士官が黄司令の耳元で囁いた。 「それは党によって禁止されています」 「……」 ハッ。という顔になった黄司令は困惑した顔で言った。 「し、しかし……それでは」 「ご心配なく」 士官が二言三言黄司令の耳元で囁く。 黄司令は目を見開いたまま、ただ頷くだけ。 そして――― 「パク大尉」 「はっ」 「コホン……ああ。私とヨン少佐はこれより席を外す。以降の指揮は君がとってくれたまえ」 「……は?」 「これは命令だ。最善を尽くしてくれたまえ」 ●糖花島(とうかじま)付近 光の矢が、まるで吸い込まれるように、濃紺色に塗装されたグレイファントムKAの胴体に風穴を開けた。 直後、騎体のあちこちからオレンジ色の炎が吹き出した。 「クソッ!やられた!コントロールが!」 騎体を操る騎士が混乱していることは、まだ生きているコントロールユニット越しの動き、つまり、グレイファントムKAそのもののパニック動作でわかる。 「キムっ!かまわんっ!脱出しろ!聞こえているな!?」 その騎の間近にいて、一部始終を目撃していたペ中尉が怒鳴る。 「わ、わかった!―――206号騎、脱出(ベイル・アウト)!」 バンッ! グレイファントムKAの頭部と胸部で小さな爆発が起きた。 爆破ボルトとロケット推進装置が作動し、ハッチが吹き飛んだのだ。 頭部をほぼ完全に吹き飛ばし、MCL(メサイア・コントローラー・ルーム)を構成するユニットが射出されたのを、ぺ中尉は確かに見た。 「よし。MC(メサイアコントローラー)は大丈夫だ」 ほうっ。と、ペ中尉の口から思わず安堵のため息が漏れる。 「大丈夫でしょうか?」 MCL(メサイア・コントローラー・ルーム)からイ少尉の心配そうな声が聞こえた。 「大丈夫さ―――グレイファントムは、脱出装置についてはロシア製の“スターリン”より信頼性が高いと聞く」 敵を警戒しつつ、ペ中尉はしゃべり続けた。 ―――敵は近くにいない。多分、第3小隊の生き残りを狙っているんだ。 ペ中尉はしゃべり続けていたかった。 無言になった途端、死にそうな、そんな予感がしたからだ。 「だけどね?もっとスゴイのがあるのさ。アングラ雑誌で読んだけど、日本軍の“インペリアル・ドラゴン・シリーズ”は、MCL(メサイア・コントローラー・ルーム)をユニット単位で安全区域にテレポートさせる“テレポート・エジェクト・システム”を導入たってさ」 「魔法で脱出?」 「ああ。だから、MC(メサイアコントローラー)は騎体が吹き飛んでも怪我さえしないって。後はエンジンもだそうだ」 「騎士は?」 「責任とれってことかな―――っていうか!」 ぺ中尉は、そこでようやく横を飛行しているグレイファントムKAのコクピットから誰も脱出していないことに気づいた。 もう、騎体が完全に炎に包まれつつあった。 「キム、早くしろっ!MC(メサイアコントローラー)はもう脱出した!」 「脱出出来ない!シートが、シートが動かない!騎体のフレームが歪んだんだ!ハッチが飛ばない!」 「キムっ!今そっちへ!」 「た、助けてくれっ!火が、火がぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっっっ!」 ズンッ! 光が走り、キムの乗るグレイファントムKAを串刺しにした。 それはむしろ、救いだったのかもしれない。 苦しまずに死ねる。 それは―――救いだ。 ペ中尉は、魔法攻撃の直撃を受け、グレイファントムKAが四散する光景を、ぼんやりと眺めながらそう思うしかなかった。 「中尉っ!」 MC(メサイアコントローラー)の怒鳴り声がなければ、ペ中尉はいつまでもそうしていたろう。 だが、ペ中尉は軍人で、しかもここは戦場だ。 軍人として鍛えられ、世界に冠たるグレイファントムKAを預かる彼は、即座に我に返った。 「少尉!敵は!?」 「索敵レーダーに反応!後方2時、距離1250!」 とっさに騎体をひねり、騎体を反転させる。 そこにベ中尉が見たモノは、巨大な剣を振り下ろそうとする漆黒の騎体だった。 「い、いつの間に!?―――ええいっ!」 ギュィィィィィンッ! ペ中尉は、胸部追加ブースターを全開に開き、敵との距離をとる。 ザンッ! 振り下ろされた剣が、グレイファントムのシールドを、まるでチーズの如く切り裂く衝撃が、コントロールユニット越しに伝わってきた。 「つ、追加ブースターが無ければ死んでいた!」 「まだ来ますっ!」 「くそっ!」 まるで龍の骸骨を連想させるような禍々しいデザインの敵が再び剣を構え、襲いかかってくる。 シールドを切断された以上、実斧では意味がない。 とっさにそう判断したペ中尉は、グレイファントムの主力装備である実斧を放り捨て、腰部にマウントされていたレーザーソードを抜いた。 ギインッ! 剣とレーザーソードがぶつかり合い、目もくらむような光があたりを照らし出す。 「正解だった!」 ペ中尉は思わず大声で。 「光剣じゃなきゃ死んでいた!」 「中尉!」 MC(メサイアコントローラー)が悲鳴を上げた。 「パワーが負けていますっ!」 「こっちはグレイファントムだよ!?」 ペ中尉はコントロールユニットを握りしめ、パワーを引き出そうと必死だ。 「米軍の本国防衛用に開発されたM64ほどじゃないけど、M16フリーダムファイター並の出力はあるって……司令部が!!」 「一々解説してないで、何とかしてくださいっ!」 「両方一緒にやるっ!リミッターをカット!」 「はいっ!」 ギィィィィ―――ギュィィィィィンッ! エンジン音が数オクターブ高いものに切り替わった。 「リミッター解除、稼働時間が限定されます。注意してください!」 「わかった!何分!?」 「10分!」 「10分!?」 ぺ中尉は悲鳴をあげた。 「たったそれだけ!?」 「韓国製の素材ではそれで限界ですっ!」 「日本製を使ってくれっ!」 「ほうっ!」 ペ中尉に襲いかかったメース“ヴィーズ”を駆るアニエスは楽しげに鼻を鳴らした。 「ふんっ。やっとホネのあるやつが御登場かい?」 メースの出力も 騎士の技量も 何一つ満足出来ない相手ばかり。 一言で言ってダニ。 そんな連中ばかりだ。 それが、アニエスの下した韓国軍メサイアとそのパイロット達への評価だ。 数千年ぶりの戦いに勇んで望んだアニエスの興奮を差し引いても、かなり辛辣な評価ではある。 しかし、アニエスはすでにわずか半時にも満たない戦闘でメサイア16騎を難なく撃破しているのだ。 しかも、そのほとんどがアニエス満足に剣を合わせることさえ出来ず、アニエスは何回敵と剣を合わせたか、片手で数えてまだ余っていた。 それだけに、あんな柔らかい素材で出来た斧では意味がないと判断し、レーザーソードを抜いたペ中尉の出現に、アニエスは驚喜した。 「ハハハァッ!さぁ、歓迎してやろうじゃないのさ!」 「くそっ!」 リミッターを解除した負荷稼働状態のグレイファントムKAを駆るペ中尉は、凄まじいスピードで襲いかかる敵の剣を何とか捌くだけで精一杯だ。 「装甲に意味がないっ!」 かわし損ねた攻撃は、グレイファントムKAの装甲を確実に切断していく。 すでに肩部装甲は半分ほどまで削れている。 人類にとってはロシア製メサイア“スターリン”と並ぶ世界的スタンダードメサイア。 それがグレイファントムだ。 一概にその名を呼んでも、各国で全く形状が異なるケースがほとんどだ。 理由は簡単。 メサイアを導入する国の多くは、メサイアを単なる兵器としてだけでなく、その国の力を現す象徴を求める。 故に、その国の伝統、文化、為政者の嗜好、その他様々な要素が加わることになる。 そのほとんどが、戦闘装束に身を包んだ兵士のイメージだ。 当然、韓国軍のグレイファントムKAもその中に入る。 するとどうなるか? かつての兵士達の装束のイメージによって装甲の形状や厚さが変わってしまうのだ。 元が厚い西洋甲冑をイメージ出来る欧州各国は、特殊任務のために機動性を重視した“機動型”と呼ばれる軽装甲タイプを除けば、ロシア軍のローマイヤに代表れさるように、基本が重装甲タイプが基本だ。 加えて甲冑の伝統が薄い中東や米国もまた、これに対抗するため、グレイファントムM64やM16に代表されるように、やはり重装甲タイプになる。 問題は、伝統的に兵隊が甲冑を身につけ、しかもその甲冑が革張りなど、軽量だった場合。そして、このデザインに為政者が固執した場合だ。 グレイファントムKAはまさにこの典型例だった。 伝統的なイメージに、一応こだわりつつ、それでも装甲厚に神経を注いだ中華帝国や日本とはワケが違う。 その結果、グレイファントムKAはグレイファントムシリーズの中で最も装甲が薄いことで知られる結果となった。 敵の破壊力を差し引いても、これでは気休めにもならないだろうというのが、ペ中尉の偽りのない判断だ。 「くっ!」 振り下ろされた剣をギリギリで受け止め、騎体をひねって背後をとろうとする。 装甲が薄い分、機動性だけはいい。 だが――― ガギィンッ! 「ぐっ!?」 鈍い音と共に騎体に走った衝撃に、ペ中尉は一瞬、気絶しそうになった。 衝撃の意味はすぐにわかった。 背後に回られることを嫌った敵の蹴り技をモロに喰らったのだ。 「くそっ!」 「中尉!」 MC(メサイアコントローラー)がペ中尉に告げた。 「空軍が攻撃を開始しますっ!」 「何っ!?」 「このまま敵をこの場で喰い止めてください!これは命令ですっ!」 「どこからだ!」 「軍総司令部からですっ!」 「無茶苦茶だぞ!」 鋭い突き技を何度となくかわすペ中尉は、本人は気づいていないが確かにこのメサイアを喰い止めてはいた。 「やってるじゃないですかっ!」 そのMC(メサイアコントローラー)の言葉は、彼にとって決して慰めにはなっていなかった。 「空軍はどれ位の戦力を持ってきたんだ!?」 「約80機。全機対地攻撃用に爆装しています」 「そりゃスゴい」 ペ中尉は、F-4が80機で大編隊を組む光景を見てみたかった。 残念ながら、今の状況ではとてもムリな話だが――― ●“天壇”司令部 「へえ?」 接近しつつある見慣れぬ乗り物がスクリーンに映し出され、ダユーが感心したように言った。 「あれ、人間が乗っているのですよね?」 「……らしいな」 グラドロンは大した感慨もない口調で頷く。 「おそらく、あの翼の下の黒い物体は、先程の白い筒と変わらないじゃろう」 「ドーンッって?」 ダユーは握った手を大きく開き、クスクスと笑い出した。 その可憐な少女さながらの仕草でさえ、グラドロンの感心を誘わない。 「まぁ―――あの程度、どうとでもなるが」 「どうなさいます?」 「コランタン」 「はっ」 「アニエス達の現在位置は?」 「Sフィールド。ポイント25です」 「ふむ……なら大丈夫……か」 「グラドロン様?」 「コランタン……防壁のよいテストじゃ。―――やれ」 ●日本海上空 糖花島(とうかじま)付近 「狙いは15キロの大物だ!」 糖花島(とうかじま)へ接近しつつあるF-4編隊長はE-737 からの誘導を確認しつつ、部下に怒鳴った。 「日本軍からの花火は上がっていない!一気に殺るぞ!」 「了解っ!」 部下からの威勢の良い返答に満足した彼は、操縦桿を握り直した。 憎悪する日帝が攻めてきたのだ。さすがに15キロの糖花島(とうかじま)を空に浮かせるなんて信じられないことをしでかすとは予想出来なかっただけだ。 「いつの間に糖花島(とうかじま)を占領していたか知らないが」 「許せませんね」 F-4の後席に座るRIOがまるで編隊長の機嫌をとるかのように大仰に頷いた。 「落とし前はきっちりとってやる。距離は?」 「―――敵の電波妨害のようです。レーダー、レーザー使用不能。計器類にも被害が」 「ちっ!高度計が狂いだしてやがる!」 狩野粒子の脅威を知らされていない彼ら韓国軍人は、目の前で狂う計器類を日本軍の電波妨害兵器によるものと切り捨てた。 そして――― 「編隊長!」 新米の李大尉が興奮気味に言った。 「第一波の攻撃指揮は是非、自分に!」 「……お前のオヤジさんは、確か王制党の」 「はいっ!首都圏第二区幹事を!」 「よし……オヤジさんによろしくな。第一波25機の指揮をとれ」 「はいっ!第一波参加機へ。李大尉だ!これより俺が指揮をとるっ!俺を先頭に編隊を組めっ!」 李大尉機を中心に爆撃編隊が組まれる。 無線のノイズがさっきからひどくなる一方だ。 「電波妨害にすぎない!全機、怯むなよ!?―――続けっ!」 糖花島(とうかじま)の上面。かつて観測所のあった付近を爆撃ポイントとすることは、出撃前から決められた通りだ。 李大尉は、当初の打ち合わせ通り、その爆撃ポイントめがけて機体をコースに乗せた。 ドズゥゥゥゥゥム!! ズズンッ! 粘っこい爆発が編隊長の耳を、その機体ごと打った。 攻撃の直撃を受けたのか!? そう編隊長に誤解させるほど派手な衝撃だ。 音の発信元は糖花島(とうかじま)方面。 「25機の爆撃による衝撃がこれほど強いとは思わなかったな……」 編隊長はそう思ったが――― 「編隊長!」 RIOが悲鳴を上げた。 「編隊長はご覧にならなかったんですか!?さっきの!」 「何?どういうことだ?」 「第一波は全滅です!」 「なっ!?」 「連中、見えないバリアみたいなモノに突っ込んでバラバラに―――」 「馬鹿な!」 「間違いありませんっ!」 ●“天壇”司令部 「あらら……」 ダユーが呆れた。という声で言った。 「たかが防御壁……凌げないにしても、避ければよいものを」 「気づけなかったんじゃろうよ……マヌケめが」 「気の毒に思われてます?」 「哀れんでおるわい」 「では―――残りは私のエモノで」 「フン……好きにせい」 ●日本海上空 糖花島(とうかじま)付近 「しつこいんだよ!」 グレイファントムKAでヴィーズ相手に渡り合うペ中尉だったが、騎体がもう限界だった。 何度目か忘れた敵の剣を受け流すビームサーベルの光が最初の半分も無くなっていた。 コクピットは警報とアラームがもうすこしで騎体を占領することを告げていた。 「空軍はかかったんだな!?」 「すでに全滅!」 「全滅!?」 「第一波が、あの島のFGF(フリー・グラビティ・フィールド)に激突して、残りは敵の攻撃で!」 「FGF(フリー・グラビティ・フィールド)なんてわかりそうなものだろうが!」 「戦闘機にそれは酷です。我が国はFGF(フリー・グラビティ・フィールド)を発生させる大型飛行艦を保有していません!」 「無知は恐ろしい罪だな……」 チラと見た計器類は半数以上が真っ赤かブラックアウトしている。 いわばエンジンから無理矢理パワーを搾り取るリミッターカットの悪影響だ。 関節系、推進系、すべてが危険域に達している。 「ええいっ!」 ペ中尉は全てを振り切るように頭を激しく振った。 「残存するグレイファントムは!?」 「あと2騎……あと1騎!」 「そいつに通報してくれ!」 「この騎のことです!」 「……脱出するっ!攪乱幕、照明弾、構わないから、目つぶしになるもの全部叩き付けろっ!」 「はいっ!」 「あとはブースターが吹き飛ぶまで逃げるっ!海に落ちたら泳いででもな!」 ●“天壇”司令部 「“エサ”の捕獲は順調です。抵抗は散発的」 コランタンは事務的な顔を崩さずにグラドロンに報告する。 「上陸時点でのエサの数は推定2万5千。エサとしては十分です」 「他の物資は?」 「現在、陸戦隊が調査中です。調査完了には今しばらく」 「急げ」 「はっ」 ●韓国軍鬱陵島防衛隊司令部 「な、何なんだあれは!?」 突如現れた巨大な岩塊。 そこから舞い降りたのは――― 「撃ちまくれっ!」 司令部の前にバリゲートを築いたパク大尉が自動小銃を手に怒鳴る。 「他の部隊との連絡は!」 「無線、有線、共に通信不能!他部隊との連絡、一切つきませんっ!」 「―――くそっ!」 司令部へと通じる通路。 その向こうから迫り来るのは、生きた人間ではない。 TAC(タクティカル・エア・カーゴ)らしき飛行物体が大量に着陸したのが市街ブロックの市場のど真ん中。 それ以来、命令系統は寸断され、他の情報はすべて伝令に頼り切っている。 そして、その伝令さえ、今ではつながらない。 何しろ相手は――― 「銃弾を喰らっても死なないなんて!」 自動小銃のマガジンを交換しつつ、部下の一人が悲鳴に近い声をあげた。 「日本軍は一体、どんなヤバいクスリ使ってやがるんだ!?」 「イ、手榴弾貸せ。通路を吹き飛ばす。その後は……」 「その後は!?どうするんです!大尉!」 「救援を待つ。ダメならそん時ゃ覚悟決めろっ!」 ●“天壇”司令部 「屍鬼(グール)達のエサに新しい仲間……と」 ダユーはコランタンの報告にそこそこの満足感を示した。 「後は、2、300体、半島のあちこちに放り込んであげれば完璧ね♪」 「そういうわけにもいかんぞ?ダユー」 「えっ?」 「何故、我々がこんな島に来たか……そして、我々が、何故にこんな海にて降伏するハメになったかは、一々言わんでもわかるだろうな?」 「……ハァッ……ほとんど忘れかけてましたわ?」 「コランタン。“バイパイス”の状況はわかった。取り込み口周辺の土砂を吹き飛ばし、バイパスとの接続を可能に―――」 ドォォォォォォォォォォォン!! 鬱陵島(うつりょうとう)が揺れたのは、その瞬間だった。 そのままだったら確実に鼓膜をやられるような派手な音を伴い、ダユー達の目の前で巨大な土煙が立ち上った。 「何!?」 土煙の中、パラパラと落下する土砂が“天壇”にも容赦なく降りかかる。 「何が起きたの!?」 「“天壇”に被害なし!謎の飛行物体1飛来、鬱陵島(うつりょうとう)に命中!」 「飛行物体?」 「ヴォルトモード軍からの情報にある、人類側の「大砲」なる物による攻撃かと思われます」と、コランタンが言った。 「―――ふむ?」 「警戒が不十分でした。砲弾なるものは、撃ち落とすことは可能です」 「そうか……いや?」 グラドロンは思いついた。という顔で言った。 「コランタン」 ●韓国領内 鬱陵島(うつりょうとう)に対する砲撃。 それを実現したのは、日本軍侵攻に備えて興南(フンナム)沿岸砲兵隊から移動中だった2門の砲。 80cm列車砲―――“グスタフ改”“とドーラ改”という。 ドイツクルップ社によって1930年代に製造された、総重量約1350トン、全長42.9m、全高11.6m。この世界でも、実体弾を撃ち出す砲としては世界最大を誇る。まさにモンスターだ。 砲身長28.9m、口径80cmのカノン砲をもって、4.8トンもの砲弾を最大45キロの彼方まで届かせることが出来る砲なぞ、他にありはしないし、稼働には5千人近い人員と、さらに移動だけで専用のディーゼル機関車2台が必要とする贅沢なシロモノなんて、他に存在するはずがない。 陸の上で存在が困難なのは、クジラと巨砲。この砲もまた、長距離の移動の際には分解されて運ばれ、実際に砲撃するまでに、整地、レールの敷設までを要求した挙げ句、準備完了に数週間を要する。 トドメの如く、百発撃ったら400トンの砲身交換が必要な砲を「贅沢」と言わずに何と呼べばよいのだ? こんな砲だから、さすがの陸軍大国ドイツも、開発後数年で、試作2両を大韓帝国により二束三文で買い叩かれたとしても無理はない。 韓国人は、この砲に取り憑かれたといわれている。 何しろ、大型貨車4台(台車は8台分)に載せられた本砲を動かすには、線路が複線で計4本、必要。組み立てたければさらに4本必要という、普通の国ならサジを投げるようなシロモノだ。 だが、それでさえ、彼らはクリアした。 幹線幹線鉄道に「予備用線路」、「非常時線路」と「軍用線路」を通常の線路に付け加える「国鉄8線化計画」を実施。列車砲が国土全てで運用出来る環境を、10年がかりで作り上げてのけたのだ。 日本が解体することなく運べる限界サイズである28センチ砲と40センチ列車砲の量産に取り組むのを後目に、クルップ社から買い取った予備砲身をベースに自国生産した「80センチ列車砲」を後に4両(トール、ロキ、レオポルド、ベルタ)追加していることも、彼らがいかに列車砲に取り憑かれたかの証拠みたいなものだ。 配備から半世紀。 韓国人の誇りとまで言われた列車砲。 日本軍が46センチ砲や50センチ砲の戦艦を作っても、列車砲は作れまい。 その気になれば対馬まで狙えることから、韓国国民がつけた名が、「対馬砲」もしくは「海峡砲」―――砲は彼らのプライドなのだ。 ちなみに砲弾の射撃スピードは毎分2発。 装弾のテンポが著しく遅いように感じるだろうが、実際は違う。 むしろ逆だ。 ドイツ時代のドーラの射撃スピードとは比較にならない程、“早い”のだ。 「第4射撃、完了!」 ドーラ改の真横には、砲撃の衝撃に耐えられるよう、専用に設計された砲弾運搬用貨車と、シールドを構えた4騎のグレイファントムがいた。 装甲はほとんど外され、カラーリングも異なる。 回収用に変更された騎体、“ベルゲ・ファントム”と呼ばれるタイプだ。 「座標修正―――次弾装填開始!」 80センチ砲の恐ろしい程の衝撃を、シールドでしのいだベルゲ・ファントム達の一騎が砲兵司令部の命令に従い、砲身の尾栓を開き、空薬莢を砲から引き出す。 別なベルゲが2騎、砲弾運搬用貨車の両脇に立つと天井の外された貨車から一発ずつ砲弾を取り出し、ドーラの砲身へ装填。さらに別な騎が尾栓を閉める。 この間、わずか30秒。 そう。 クレーンによる揚弾・装填といった作業をすべて砲兵であるメサイアに代行させるという信じがたい方法を採用すべく改良したのが“ドーラ改”。 人間は砲撃位置の修正だけをすればよい。 機械にデータ諸元を入力すれば、あとはモーターと歯車が勝手に砲を動かしてくれる。 そして――― 「第3射、弾着結果はどうなっているか!」 「風に流されている!錨頭2修正!」 何しろ、40キロとはいえ、これほどの巨弾の着弾だ。 トンヘ付近に並んだ2門は近くのテベク山山頂の観測班から着弾はかなりはっきり確認出来る。 「データ入力―――反映!」 「撃てっ!」 ●“天壇”司令部 砲弾が次々と着弾し、地面が抉られる。 「成る程?」 コランタンは感心したように言った。 「我々が一々、穴を掘る必要はありませんな」 砲弾が着弾するたびに、あちこちに巨大な穴が開く。 一々掘る手間が省けるだけに、これは楽だと言わざるを得ない。 「そういうことだ―――“防壁”が破られる可能性は?」 「相手が砲弾とやらを“中和”する必要に気づかない限りは」 「―――そうか。陸戦隊に被害は?」 「ございません。連中の狙いはどうやらこの“天壇”ですが、“防壁”にまだ一発も命中していない有様で」 「しばらくは……大丈夫だな」 「はい」 「うむ……島民の確保、急がせい。島を占領後、バイパスを、“天壇”のエネルギーを確保する」 「はっ」 ●数時間後、ソウル・韓国軍総司令部 「対馬砲はどうなっているか!」 「すでに砲弾を撃ち尽くしました!砲身を交換すべく後退中」 「―――ちっ!糖花島(とうかじま)へ与えた被害は!?」 「皆無!」 「何ぃ!?」 「敵は不可視の防壁を展開、我が軍の砲撃を全く受け付けませんでした。それより、鬱陵島(うつりょうとう)の砲撃による被害が……」 「―――マスコミへは日帝の空爆と説明しておけ。対馬砲に対する信頼を傷つければ陸軍の名誉にかかわる。―――黄司令」 「はっ……」 「偶然にも司令部へ来た君だけが、守備隊の生き残りだ。よく生き延びたというべきだな」 「恐縮です」 「うむ……同族のよしみだと思ってくれ。―――おい、島へは渡れないのか?」 「糖花島に接触して墜落したF-4部隊の二の舞です」 近くにいた士官がそう答えた。 「島との通信は?」 「電波妨害がひどく、通信は一切不能」 「総長!」 将官が通信士官から渡されたバインダーを手に敬礼した。 「島で新たな動きが」 「何だ」 「糖花島が沈降。鬱陵島と接触しました!」 「何!?」 ●“天壇”司令部 ギギッ――― バキバギバキバキバキ……ッ! ズズズズズッ…… 岩が砕け、街が潰されていく。 空から巨大な岩塊が降りてきて、島を潰そうとしている。 そんな、光景だった。 「よし!そのまま降ろせ!」 “天壇”のコントロールを担当する士官が部下に怒鳴る。 「バイパスはすぐ間近だ!よーしっ!速度そのまま!」 「入るよ?」 音もなく開いたドアから顔を見せたのは、アニエスだ。 「ご苦労だな。アニエス大尉」 「ヘン……大尉なんて肩書き、堅苦しくってキライだって、何度も言ってるだろ?ダンナ」 「フッ……そうだったな」 「まいったよ。無理して出したジームの隊がエネルギー切れおこして、結局私達二人で大立ち回りさ……で?これで?」 「ああ。人類の砲弾のおかげでこの島の表層地盤はガタガタだ。この“天壇”の質量で押せば、バイパス口に詰まってた土砂はすべて押し出せる」 「まったく、神族もマヌケっちゃあ、マヌケだねぇ」 グラドロンが座るシートの背もたれにしなだれかかりながら、アニエスは笑った。 「戦後処理に大童だったとはいえ―――敵の武器やエネルギーを封印地点のこんな間近に置くなんて……私なら宇宙にでも放り出しちまうさ」 「そのおかげで、我々が生き残れるのだ」 「マヌケに感謝……」 「そうだ。バイパスさえ開けば、エネルギー切れのため稼働不能状態のメサイア部隊もようやく動かせる。冬眠状態のままの“飛龍”達もじゃ」 「ふふっ……屍鬼(グール)達の不死の軍団。私達の黒死騎士団、そして飛龍軍団。昔を思い出すねぇ……神族相手に大立ち回りを演じたグラドロンの軍団の復活かぁ」 ん?という顔で、アニエスは訊ねた。 「そういや、ここの人間共は?」 「子供や赤子は選別してダユーのラボへ。選別から漏れた者は食料庫行きじゃ」 「年寄りも?」 「これからゆっくり選別しますわ?」 ダユーは楽しげに言った。 「屍鬼(グール)になったのが20万。捕獲出来たのが5万匹。残りはエサになっちゃって……クスクス」 「―――ま、そういうことかい?」 ダユーのラボ 食料庫 エサ ……どういう意味かわかるアニエスにこの時出来たことは、表面上だけは平静さを保つだけ。 それだけで、アニエスは誰かに褒めて欲しいと本気で思った。 鬱陵島(うつりょうとう)への糖花島(とうかじま)接触から72時間後、糖花島(とうかじま)は再び離陸。日本海を日本列島へと移動を開始した。 84時間後、決死隊として鬱陵島(うつりょうとう)に上陸した陸軍兵士達が見たものは、砲撃によって廃墟と化した島と、屍鬼(グール)化した少数の民間人。 鬱陵島(うつりょうとう)被災時に存在したはずの28万人の姿は、島から完全に消えていた。 この事件の翌日。 韓国社会は、日本軍による鬱陵島(うつりょうとう)侵攻と断定。 国際社会が鬱陵島(うつりょうとう)に潜んでいた魔族軍が動いたと断じたのとは一線を画す動きを見せた。 この世論を受け、韓国議会は満場一致で対日全面戦争に向けた権限を李首相に付与。 李首相指揮下の元、韓国軍が動き出すきっかけとなる。 後に、「鬱陵島(うつりょうとう)事件」と呼ばれる出来事が、これである。
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No013ヴァルキュリア CP250/AP1500/DP1100/神聖の魔人この魔人は自分の墓地の魔人種族ユニットの数×100を自身のAP・DPに加算 解説・考察 魔人デッキの切り札。 希望の雷を含んだ八卦の篭手、四象の篭手、ドロー魔人によるデッキで無理なく強化出来る。 ドロー魔人の展開力とそれに伴う火力があるので、凶悪なフィニッシャーになってくれる。
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「司令部から返答は!?」 早見教官は、同僚の井上教官と共に、敵をAハンガーの裏に追いつめた。 そう判断していた。 敵からの攻撃はない。 むしろ、敵は後退しつつあった。 強力なジャマーが展開されたが、それさえ、敵の苦し紛れの一撃だと、そう判断していた。 Aハンガーは弾薬庫として使われている。下手に流れ弾でも当てようモノなら、刑務所送りでは済まない。 タダでさえ狙撃に向いていない機動速射野砲の発射速度を落として、一々チマチマと撃たなければならないことに、早見教官はいらついていた。 「司令部と通信がつながりませんっ!通信反応なしっ!」 「ジャマーか?それともやられたのか?―――ハンガー内の“雛鎧(すうがい)”はどうした!」 「全騎、コクピット改装中です!そうでなくても、調整に手間取って!」 「二宮めっ!」 戦況モニターは先程のジャマーの影響で、彼我の一度教えてこない。 目に頼る有視界戦闘が全てだ。 幸い、地の利はこちらにあるが、少しでも人手が欲しいのは本音だ。 とはいえ、ヒヨコ共に加勢を頼んだら教官として末代までの恥だ。 やるしかない。 「井上、次に撃ったら突っ込むぞ!」 「了―――なぁっ!?」 「どうした!?」 マガジンの装填が終わった早見教官の目の前で井上騎が倒れた。 頭部を敵の巨大な腕にわしづかみにされ、引き倒されたのだ。 「井上っ!」 もう一度言う。 機動速射野砲は、狙撃には向いていない。 速射性能を偏重するあまり、戦車砲のように、砲弾を目標に命中させるより、目標周辺にバラ撒くために造られたようなシロモノだ。 早見教官は、井上騎の下にいるのが敵騎だと判断した。 そして、体が勝手に動いた。 トリガーを引いてしまったのだ。 「―――しまっ!」 慌てる早見教官の目の前で、放たれた砲弾は井上騎に吸い込まれるように命中。爆発した。 「井上っ!」 「―――たっ!助けっ!」 井上の悲鳴が聞こえたのはその時だ。 その時まで、井上は生きていた。 そして――― 安堵する早見教官の体を、敵の攻撃がコクピットごと粉砕したのは、その直後だった。 夜が明けた。 崩れ落ちた校舎。 未だ炎上する倉庫群。 各所に転がるメサイアの無惨な骸。 目の前に広がる惨状を前に、皆がため息をつく暇さえ与えられなかった。 「都築、宗像、メサイアのセンサーで生存者を捜せ!」 残骸の中に横転していた演習用の野戦指揮車から引っ張り出した通信装置を手に指示を飛ばすのは長野教官だ。 その横では、美奈代達が野戦指揮車を高機動車とワイヤーで元に戻そうと悪戦苦闘していた。 全員、顔や制服はすすで汚れ、水の一滴も飲んでいない。 「敵の再襲来は!?」 「あったら終わりだ!考えるな!」 「“雛鎧(すうがい)”はどうしたんです!」 「再組み立てをやっている人手がない!大体、トレーナー騎で戦闘が出来るわけないだろうが!つべこべ言わずにさっさと生存者を捜せっ!」 怒鳴るだけ怒鳴ると、長野大尉は通信を切った。 あちこちに指示を出し続けていたので、張り付くような喉の痛みに、少しだけ顔をしかめた。 冬の季節には珍しいほど強い日差しが焼けたアスファルトに照り返す。 ―――せめて水がほしいな。 長野大尉はそう思うが、あの戦闘でこの施設のライフラインは完全に破壊されている。上水道用の貯水タンクは戦闘で破壊されているし、もとより訓練校に給水車はない。 おかげで飲み水どころか、負傷兵の医療用の水も不足している有様ではどうしようもない。 「―――ご苦労。引き続き、生存者の発見・保護に全力をあげてくれ」 警備隊の生き残りから報告を受けていた二宮が、長野に振り返った。 「さっき、岩見教官の上半身が見つかった。これで校長以下、昨晩、施設内にいた教職員の8割が―――」 二宮は言い淀んだ後、 「“戦死”した」 そう、言った。 「―――生徒達は?」 長野は、近くに転がっていた燃えさしを拾うと、口にくわえたタバコに火を付けた。 煙の向こうに転がる“幻龍(げんりゅう)”達には、未だ誰も手を付けていない。 生存者を捜す手でさえ足りない中だ。 例え騎士だろうと何だろうと、確実に死んでいる死体一つを引っ張り出すなら、まだ生きているかも知れない場所に埋まっている不明者捜索にこそ人員を割くべきなのだ。 二宮が視線を向けた先。 瓦礫の間をゆっくりと進む二騎のメサイア達からは何の報告もない。 装備がないため、メサイアとのデータリンクが出来なければ、二宮達といえど待つしかない。 「瓦礫の下で頑張ってくれていることを祈りたいが―――」 「現在、生存が確認されている生徒達は―――」 長野大尉は近くの瓦礫に腰を下ろした。 せーのっ! せーのっ! 指揮車をひっくり返そうと躍起になってワイヤーを引っ張る女子生徒達の声が、高機動車のエンジン音に負けじと響く。 「―――半数程度にとどまります」 「よく生き残ったものだ」 「染谷も、無事だったんですね?」 「ああ。魔法射出装置(マジック・エジェクト・システム)を上手く使った結果だ。コクピットブロックごと回収されている」 「さすがですな」 「ああ……救援部隊がもうすぐ来る」 「救援部隊?」 「―――“鈴谷(すずや)”だ」 長野のポケットからタバコを抜き取りつつ、二宮は親指で空を指した。 海の方角から、巨大な白いコンテナが近づきつつあった。 ―――1時間後。 上空をTAC(タクティカル・エア・カーゴ)が盛んに行き来する。 地上では、重機が動き出し、赤十字の天幕が張られ、衛生兵達が駆け回る。 「―――災難と言えば、これ以上の言葉はないわ」 二宮にそう言ったのは、彼女とほぼ同年代の女性。 高い背と切れ長の目、寸分の隙もなく着こなされた軍服と徽章の列が、どういう性格で、どういう経歴の女性かを物語る。 肩章は中佐。 胸には艦長を示すドルフィンマークが輝いている。 “鈴谷(すずや)”艦長、平野美夜(ひらの・みや)中佐だ。 「敵の奇襲を受け、為す術もなく“幻龍(げんりゅう)”4騎を喪失。訓練校は壊滅」 美夜は空に浮かぶ“鈴谷(すずや)”を見上げた。 水に浮かぶ水上艦艇と違い、飛行艦である“鈴谷(すずや)”は空に浮かぶことが出来る。 こういう任務にはうってつけの存在だ。 「人的犠牲は戦死だけで7割―――不幸中の幸いは、実験騎が2騎共、無事だった程度ね」 「……“幻龍(げんりゅう)”の全騎喪失は痛いわよ」 「安心なさい」 美夜は瓦礫の中を縫うように歩き出した。 「真理に責任負わせようなんて、誰も考えていないから」 「……」 「訓練校としての機能は、帯広の方で引き受けることになりそうよ」 「帯広で?しかし、あそこは」 「そう。ここの移設予定先だったトコ。まだシミュレーターがようやく動かせる程度だけど、仕方ないわよ。訓練騎はほとんど回収騎に改装されたし、訓練騎に回せる騎はないし」 「しかし」 「ついでに、来年度、候補生採用がほんの数人だったのも不幸中の幸い。―――“雛鎧(すうがい)”から“征龍(せいりゅう)”への改修はもうすぐ終わるでしょう?」 「……」 「配備されたての“幻龍(げんりゅう)”の訓練タイプが全滅して、入れ替えで帯広に送られるはずだった“雛鎧(すうがい)”のほうが生き残るなんて……皮肉よねぇ」 「イヤミ?」 「ん?」 「私達が“雛鎧(すうがい)”を動かすことも出来ず、みすみす指をくわえて“幻龍(げんりゅう)”の全滅を見ているしかなかったこと」 「まさか!」 美夜は肩をすくめた。 「真理からの報告の通りだったことは、すでに司令部も承知しているわ」 「一騎でも動いてくれれば、みすみす犠牲は出さなかったわよ」 二宮はそう言うのが精一杯だ。 命がけでハンガーに飛び込んでみたら、“雛鎧(すうがい)”はエネルギーバイパス周りの整備のため、主骨格(マスターフレーム)から主要部品がほとんど外されていた。 つまり、“雛鎧(すうがい)”はメサイアとしてどころか、機械としてすら動かなかったのだ。それを知った二宮が、皆をすぐにシェルターへ退避させたのは、教官として妥当な判断だった。 もしかしたら、敵が“雛鎧(すうがい)”を“メサイアの残骸”と誤認して攻撃しなかったおかげで、“雛鎧(すうがい)”は無事だったかもしれないことも含めて、二宮はなにやら複雑な思いで美夜の後を歩く。 聞き慣れたディーゼルエンジンの音が聞こえ出した。 指揮車がようやく動けるようになったらしい。 二宮達の横を、旧式のジープに乗り換えた美奈代達がすれ違う。 二人に気づいて敬礼する顔が浮かないのは、なにも自分達の母校が破壊されたせいだけではない。 彼女たちの次の任務だ。 死体の回収作業。 自分で命じておいてなんだが、年頃の女の子達が喜ぶ仕事ではない。 美晴あたりが吐きまくるか、失神することは覚悟の上だ。 意外と、祷子は平気そうだったのが気になるが―――。 「……それと」 目的地に到着した美夜が足を止めた。 「……司令部も、“あいつ”にはかなり興味があるみたいね」 そこは、あの“鳳龍”が入ってたハンガー。 ハンガーの床にころがされている“それ”は、、“鈴谷(すずや)”から降ろされたベルゲ騎(注:擱座(かくざ)騎の回収を目的としたメサイアのこと)達によって大型のベースキャリア(注:稼働不能になったメサイアを搭載するTAC(タクティカル・エア・カーゴ)のこと)に移動されつつあった。 昨晩、撃破された魔族軍のメサイアだ。 二宮にも、たかが訓練校が奇襲攻撃を受けたからといって、飛行艦を司令部が差し向けるなんて大盤振る舞いに出たのか、それだけでもう察しがついていた。 おそらく、魔族軍のメサイアと聞いただけで、開発局から相当な圧力が加わったのは確かだろう。 「魔族軍のメサイアってヤツかしら?」 「近衛開発局は、全力を挙げてこいつの解析にかかる。そのために彼女も送られてきた」 「彼女?」 「―――お気の毒様」 日付が変わる頃、雨が降り出した。 静かに降り続ける雨音を聞きながら、美奈代達は焼け跡から見つけだした毛布にくるまっていた。 「……きっと、涙雨ですね」 教室の一角、雨風が入らない程度の中、誰かのそんな呟く声が聞こえた。 祷子か美晴、どちらの声かわからない。 「……そう、だな」 美奈代は小さく頷いた。 染谷が生きていたと聞いたときは、涙が出るほど嬉しかった。 その安堵感があったものの、体がこの異常事態に反応して、興奮して眠れない。 建物の残骸に雨が当たる音に回収作業が続く音が混じる。 ザッザッ。 不意に、軍靴が2つ、壁の向こうを歩いていく音が聞こえた。 「気を付けろ」 声がした。 「下手に扱うとワタがこぼれるぞ」 「……ああ」 二人が何を運んでいるか。それでわかった。 「重いな」 「ああ」 美奈代は頭まで毛布を被ると、無理矢理目を閉じた。 どんな夢を見たのか。 夢を見たのかさえはっきりしない中、結局、美奈代は朝を迎えた。 講堂で食事の配給が始まるぞ! メガホンでそう叫ぶ声に誘われるように目を覚ました美奈代達は、他の多くの生き残った傷兵がそうだったように、無言で講堂に向かった。 雨は止んでいた。 途中、死体袋の山の横を通る。 気温が低いので腐臭はしない。ただ、自分達が血の臭いに鈍感になっていることに気づかないだけかもしれないが、心の中には、はっきりと違和感も恐怖も、なくなっていた。 天井が半壊した講堂に入ると、整備兵や警備兵達が配給にありついていた。 皆、憔悴しきった顔で、手の中の一時の暖かさにすがっていた。 美奈代達も、列に並んでようやく配給にありついた。 列に並ぶ数の少なさが、犠牲者の数を教えてくれる。 食事はポタージュに非常用の乾燥米をかけただけのもの。 それでも、口に広がる暖かさとポタージュの甘さが、何より有り難い。 美奈代はその後、指示を求めて二宮の姿を探した。 見つかったのは、瓦礫の影で誰かと立ち話をする後ろ姿。 立ち話が終わってからと思い、美奈代は物音を立てないように慎重に二宮に近づいた。 「―――つまり」 二宮は苛立った声をあげた。 「ここは意図的に狙われた、というのですか?後藤中佐」 そっとのぞいた美奈代は、すぐに顔を引っ込めた。 二宮の話す相手は、黒服だ。 黒服―――近衛左翼大隊、魔導師や魔法騎士によって編成される特別部隊の関係者。 一般的に言って、下手に関わるべき相手ではない。 単なる教官に過ぎないはずの二宮が、なぜ黒服相手に、こんな所で話しているのか、美奈代は気にはなるが、あえて話を聞くつもりもなかった。 だが、耳にどうして入ってきてしまう。 「―――まぁ、そうなっちゃうねぇ」 「何故です?」 「一般の騎士が知っていいこっちゃないけど」 「……」 「まぁ、二宮中佐の経歴や今の立場もあるし……この地下にね?」 やる気があるのか疑わしい声が言った。 「門(ゲート)があるんだそうで」 「門(ゲート)?」 「南米やアフリカで暴れた連中が閉じこめられていたトンネルみたいなもんだそうで」 「……この地下に?」 「そう。連中、それを復活させようって、動いてるんだわ」 「この施設を吹き飛ばし、その―――門(ゲート)とやらを解放……トンネルってことは、南米やアフリカとここをつなげようとした?」 「もしくは、この地下にも仲間が眠っているのかもしれないねぇ」 「……」 アフリカや南米で暴れる無数の妖魔達。 それが自分達の足下に巣くっていると言われ、美奈代は足下が急に不安になった。 「まぁ、ここの襲撃が失敗したから?しばらくはここは大丈夫でしょう」 「―――本当に、その確認だけで、ここに来たんですか?」 「おろ?」 「本当は、後藤中佐がここにいらしたのは、そっちのハンガーに入っている“あの騎”の安否確認では?」 「……ははっ。こりゃ鋭い」 「本当なら、風間が搭乗して敵と交戦。その戦闘データが収集出来れば最高だったんでは?」 「ご名答っ!」 ……風間? あのぼんくらちゃんがなんだと言うんだ? 美奈代は耳を澄まして二人の会話に聞き入ろうとした。 だが――― 「とりあえず、ハンガー行きましょうや。あの安否、目で確認してこいってうるさくて」 「御苦労様です」 肝心の二人が遠ざかってしまう。 美奈代は肩をすくめて、その場を立ち去った。
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●大日本帝国皇室近衛兵団所属、メサイア“征龍(せいりゅう)”コクピット 「き、来たよっ!」 「ふ、フォーメーションはこれでいいの!?」 美晴とさつきの悲鳴じみた声が隊内通信に入る。 「教本ではこれでいいはずだけど……」 さつきに答える美奈代にも、自分たちが正しいのか全く自信がない。 目の前の世界を埋め尽くさんばかりの大型妖魔達を前にして、たった4騎が何が出来るはずもないという気持ちばかりが先に来る。 美奈代は、自分が焦っていることをはっきりと自覚していた。 震える手足が意味もなく動き、視線が一点を注視出来ない。 敵よりも情報にばかり目がいく。 戦うより、逃げるチャンスばかり考えてしまう。 美奈代達の駆る“征龍(せいりゅう)”が立つと“される”のは、アフリカの大地。 スクリーンに広がるその無限の大地―――いや、その新しい主―――が、彼女達を決して歓迎していないことは、その数からして明らかだ。 「敵、数推定400以上。展開中―――敵、突撃!」 「くっ!」 MC(メサイアコントローラー)の警告に、美奈代は右腕にマウントされた35ミリ機動速射野砲のトリガーを引いてしまった。 右腕にマウントされた速射砲の反動で、右腕が大きく跳ね上がり、火線が空めがけて走る。 有効射程に敵が全く入っていないのに気づいた時には遅すぎた。 「しまっ!」 「何無駄弾撃ってるのよ!」さつきが怒鳴る。 「射程はまだ―――来たぁぁっ!」 敵は重装甲重武装を誇る大型妖魔“ライノサロス”の大群。 甲冑を着込んようなだその容姿は、丁度、サイを巨大化させたような印象だ。 そんなフォルムを持つ、彼らのサイズは平均45メートルから50メートル。 正面装甲は120ミリ砲弾を受け付けない程頑丈。 そんなバケモノが数にモノを言わせて突撃してくるのだ。 しかも、その速度は音速を越える。 美奈代の暴発が呼び水になったのは誰の目にも明らかだ。 「このバカぁぁぁっ!」 「すまんっ!―――く、来るぞっ!」 その大質量が音速で突撃して来る衝撃を前に、人類が築き上げた万物は、あまりに無力だ。 美奈代騎の前で、120ミリ速射砲で乱射に近い射撃を行い、何とか突撃を止めようと足掻いた結果、逃げそこなった2騎の“征龍(せいりゅう)”が、ライノサロスの衝角をマトモに喰らい、文字通り分解した。 「早瀬っ!柏っ!―――ちぃっ!」 美奈代はギリギリのタイミングで“征龍(せいりゅう)”のブースターを開いた。 敵は音速で突撃している以上、小回りは利かない。なら、ギリギリで避けて、上空からの攻撃すれば―――美奈代の考えでは、そんな試みは成功しつつあった。 その目の前、スクリーン一杯に、ライノサロス達が産み出す漆黒の闇が広がる。 その壮絶な光景に、美奈代は一瞬、トリガーを押すことを忘れた。 グンッ!! “征龍(せいりゅう)”が、まるで何か見えないモノに殴られたように弾かれ、騎体のバランスが完全に失われた。 「な、何っ!?」 美奈代はスピンを始めた騎体を何とかコントロールしようと足掻く。 ビーッ 背筋の寒くなるような警告音が鳴り響き、コクピットを激震が襲った。 ●“鈴谷(すずや)”ハンガー 「―――全く」 床に正座させた自分の教え子を前に、二宮は心底情けないといわんばかりに顔をしかめていた。 「早瀬、柏!」 「はいっ!(×2)」 「120ミリ砲で正面装甲が割れないことは既に知っていたはずだ!」 「し、至近距離なら」さつきは悔しそうに言った。 「装甲を割れるかと思って……」 「シミュレーターの判定が厳しいんですよぉ」 美晴は、言い訳がましくそう言って口をとがらせた。 「実戦なら……多分」 「んなワケがあるかっ!」 二宮は怒鳴った。 「大体、群れで突撃しているんだぞ!?先頭の1体や2体倒した所で、敵が止まってくれると思っていたのか!?音速突撃の意味がわかっているのか!?泉っ!」 「は、はいっ!?」 脚がしびれたことにだけ気を回していた美奈代は、突然、自分の名を呼ばれて思わず素っ頓狂な声をあげた。 「音速突撃する集団の上空に出るバカがあるかっ!戦術講義で教えたはずだぞ!」 「す、すみませんっ!」 「講義中に目を開けたまま寝ていたからだっ!音速で移動する物体には衝撃波が生じることは常識だ!衝撃波に巻き込まれればバランスを崩すのは当然!そこを後続の別妖魔に狙撃されて吹き飛ばされたんだ!」 そう。 ライノサロスの大群上空をギリギリ接触しない程度の高度でかわし、上空からの攻撃を試みた美奈代を襲ったのは、音速突撃する大群が生じる円錐形の衝撃波。 数が数なだけにその規模と破壊力は想像を絶する。 それに翻弄され、騎体バランスを失ったところを、ライノサロスの大群の後ろに展開していた魔族軍の重狙撃部隊の標的(まと)にされ、美奈代騎は被弾130発、二宮曰く「ミンチの出来損ない」になった挙げ句、最後はライノサロス達に踏みつけられて最後を迎えた。 「宗像っ!後方に下がりすぎて孤立した挙げ句が、敵の集中砲火を浴びるとは、貴様は部隊の連携をなんだと思って―――ったくっ!! いいか!?明後日には実戦だぞ? 本気で死にたいのか? このままなら、確実に死ぬのはあんた達なのよっ!? 日本語わかってるの!?」 いつになく、二宮の説教が感情的になっている。 怒っているというより、泣きたい。そんな口調だ。 「図書室に行って、機動教本をもう一度読み直しなさいっ!読み終わった者から再度、シミュレーターにかかるっ!モード23から35まで終わるまで何度でも繰り返しなさいっ!生き残る方法を骨の随までたたき込む!一回でも勝てるまでメシ抜きっ!」 「い゛っ!?」 「飢え死にしたくなければ勝ちなさいっ!わかったわねっ!?」 「そ、そんな!」 「つべこべ言わずに図書室へ行きなさいっ!」 それから6時間後だ。 「きゃぁぁっっ!」 ズズンッ! 「そんなっ!?」 ガガンッ! 「またぁ!?」 ズーン! 「くそっ!」 ドドンッ! 「……本当に」 またもや正座する教え子達の目の前で仁王立ちになり、腕組みをする二宮の額の青筋がまた増えた。 「何回戦死すれば気が済むんだ。ん?」 「……」 「メサイアでの死に方を極めて本でも作ってくれるのか?」 「……っ」 「……どうした?何か言いたければ言ってもいいぞ?」 「……せめて」 涙混じりに、訴えるような声を上げたのは美晴だ。 「せめて……水を、ください。も、もうコントロールユニットを操作する力も……」 「音速突撃を阻止出来ない理由は、水不足か?早瀬」 「い、いえ……」 さつきも力無く首を横に振る。その顔はもう真っ青だ。 シミュレーターとはいえ、メサイアを6時間も戦闘機動で操縦してみれば、メサイアが騎士にかける負担の惨さがわかるだろう。 さつきの横に座る宗像も目をつむったまま、額を流れる汗をぬぐう力もない様子だ。 「泉?貴様の言い逃れは何だ?」 「あの」 正座しながら、ずっと何かを考え込んでいた美奈代は、二宮に言った。 「もういいですか?」 その一言に、居合わせたさつき達は、全身の疲労が吹き飛ぶ程の衝撃を受けた。 「……何が」 どう考えても反抗するとしか聞こえない口振りに、あきらかにカチンと来た様子の二宮が冷たく答える。 とんでもないことになった! 皆がそう心配する中、美奈代は仲間達からすれば信じがたいことを口にした。 「シミュレーター、もう一度乗せてください」 美奈代がそう言ったのだ。 「……どうにも気になるので」 「気になる?」 毒気を抜かれ、すっかりあきれ顔の二宮が首を傾げた。 「何がよ」 「……何度もやられたからかもしれませんけど……もしかしたら」 「はっきり言え」 「……奴らを倒せます」 「ほう?」 二宮は、楽しげというにはあまりに冷たい笑みを浮かべた。 「面白い……やってみろ。もし、撃破出来たら」 「出来たら?」 「明日と明後日、訓練を休みにしてやろう」 「わかりました」 美奈代は頷いた。 「ただし、お願いがあります」 「ん?」 「これまでの戦闘記録、全部見させてください」 美奈代はちらりと仲間達を見た。 「宗像達は休ませてください。私だけで結構です」 「……よし。3回、チャンスを与えてやろう。3回ともしくじったら」 二宮は頷いた。 「今度こそ、コスプレ接待だぞ?」 シミュレーターの前で死んだように眠るさつき達の前、シミュレーターに乗った美奈代は、ずっとスクリーンを見つめていた。 時間にしてすでに3時間近くが経過していた。 「……」 手元のコンソールを操作して、映像を再生しては巻き戻すことを繰り返している。 二宮が美奈代をずっと睨むように監視していた。 ―――何を考えている? そんな教え子を前に、二宮は自問していた。 美奈代が繰り返しているのは、ライノサロスの突撃前の動きだ。 シミュレーター上のライノサロスの動きは、各国から派遣された動物学者達の、徹底された観察上のデータを元にしているため、ライノサロス達の動きを完全に予想できるとされている。 問題は、一体何が気に入らないのか、その理屈が一切公表されていないこと。 つまり、何を根拠にそういう行動に出るのか。という、最も肝心な所が公表されないのだ。 そんな画面を、美奈代はそれを食い入るように見つめている。 仲間の休憩時間を確保するためではないことは、教官である二宮にはわかっていた。 仲間が鬱陶しい。 一人で考えたい。 美奈代がそう思っていることは明白だ。 ただ、そこまでして美奈代が何を調べようとしているのか、それが気になった。 「どうするのよぉ……」 再びシミュレーターに乗せられたさつきは、もう泣き出していた。 「もうやだぁ。痛いし怒られるしお腹すくし、あげくにコスプレ接待!?私、こんな思いするために軍隊入った覚えないよ!」 「喉からからで……痛いですぅ……ヒック……グスン」 美晴ももうやる気が疑わしいほどの弱々しい声でしゃくりあげている。 「絶対、除隊してやる……理由欄に、教官のイジメが原因だって書いてやる……」 「おい……泉」 宗像もまた顔色が悪い。表情にこそ出さないが、疲労の色は隠せない。 「どうするんだ?」 「あまり……自信はない」 「……おい」 「だけど」 美奈代は妙に感情のない声で言った。 「これ以外に方法はない。そう思うんだ」 「どうするんだ?」 「……あのな?」 「……さて?」 教え子達の打ち合わせが終わったようだ。 二宮はあえて打ち合わせの内容を耳にしなかった。 いや、したくなかった。 教え子が何をするのか、その行動で見届けたいと思ったから、二宮は、シミュレーターからの音声をカットしていた。 「何をどうするつもりだ?」 二宮の目の前、壁一面のスクリーンには、美奈代達の乗るシミュレーターに映し出される映像や美奈代達の顔、そして敵味方の状況を示す配置など、あらゆる情報が表示されている。 そんなシミュレーターに乗る美奈代達の立たされた状況は、こう推移している。 ライノサロス達はすでに美奈代達を発見している。 ただし、彼らにとって、美奈代達が敵なのか味方なのかわからない。 すると、群れの中から群れのボスが美奈代達を敵と認めるホルンのような雄叫びをあげる。 それを聞いた群れが突撃陣形を形成する。 後は突撃を待つだけ。 それが、このシミュレーションプログラムだ。 「……ここでも動かない?」 突撃寸前の敵を前に動かない教え子達に、二宮は眉をひそめた。 自分なら、ここで突撃を――― 二宮はそう言いかけて強く頭を振った。 教え子達は、これまで先手必勝を模索した挙げ句が、何度もこの時点で突撃し、返り討ちにあっている。 なぜ、返り討ちにされるか二宮でさえ説明できないケースも何度かあった。 ただ、ライノサロス達の角がビームを発射する能力を持つことを、美奈代達が知らなかったと白状した時は、さすがの二宮も泣きたくなったものだ。 ライノサロス達に、さんざん痛めつけられた教え子達が、今度は何をしでかそうとしているのか、二宮も見当がつかない。 「さて……一体?」 群れのボスのホルンのような雄叫びが響き、群れが陣形を作り続ける。 ライノサロスのボスが、このホルンのような声で群れに配置を指示し続けていると、二宮も聞いている。 ボスのホルンにあわせ、アフリカの強い日差しをうけ、黒い皮膚を陽光に輝かせるライノサロス達が、その巨体を震わせて動き回る光景は、コンピューターによる合成と理解しつつも思わず見とれてしまうほど圧巻だ。 「……ん?」 二宮の教え子達が信じられない行動に出たのはその時だ。 スクリーン上で、不意に美奈代達の駆る“征龍(せいりゅう)”達が地面に伏せたのだ。 自分はこんなこと教えていない! 血が頭に上りかけた二宮だったが、血管が切れそうになったのは、それだけではない。 美奈代騎以外の“征龍(せいりゅう)”のエンジン出力が、アイドリングにまで低下したのだ。 「何!?」 アイドリングから戦闘機動に必要なコンバットモードに引き上げるには、タイムラグが必要だ。音速突撃をかけられたら、逃れることが出来なくなる。 これが実戦だったら、二宮はためらわずにぶん殴っている所だ。 「あいつら!」 いや。 二宮は言いかけて首を横に振った。 正しくは――― 「泉め―――何を考えている?」 二宮は、訓練課程修了後の進路予定をまとめたファイルを開いた。 皆の進路先の内定が書かれている。 美奈代の項には、近衛参謀課程への進学、もしくは第一中隊前衛部隊。 そう、書かれていた。 参謀としての素質を磨いてほしい。 それが二宮の親心だ。各所で見せる立案能力は、二宮も一目置いているのだ。 対して、長野はそれより染谷を倒した実力に着目し、実戦部隊への配属を主張している。 二宮は、それに同意していない。 染谷と同じ部隊に配属させて、二人の関係を後押しする仏心を二宮は持っていないからだ。 「……これは、お前の採用試験だぞ?泉」 二宮はそう呟くと、ファイルを閉じた。 美奈代達が伏せた途端だ。 まるでそれを待っていたかのように、ライノサロス達のボスのホルンと群れの動きが一瞬、止まった。 少しの間をあけて、今度はより強く、重いホルンが周囲に響きわたる。 しばらくすると、ボスが動いた。 焦っているかのように、前脚で立ちあがったり、体を震わせるなど、動作に落ち着きがなくなる。 まるで迷子かだだっ子が暴れているような、そんな感じだ。 群れの動きにも乱れが生じ始める。 ライノサロス達が互いに話すように、小さな鳴き声をあげ始めた。 美奈代騎が動いたのは、その時だ。 美奈代騎だけ―――だ。 腹這いに伏せていた美奈代騎が突然起きあがったかと思うと、手につかんだ何かを、部隊の伏せる場所から見て3時方向(ライノサロス達がいる方角が12時方向)に投擲、即座に伏せた。 美奈代騎が投擲したのは、メサイアが装備するM22型柄付手榴弾だと、二宮はすぐに理解した。 メサイアの握力で手榴弾が握りつぶされるのを防ぐため、あえてグリップを取り付けた投擲爆弾だ。 爆発と同時に大音響をもって周囲を圧倒する、音響爆弾としての機能も有する。 大地に転がって爆発した音と閃光を、シミュレーターが、人の感覚器に耐えられる程度に調整して表現してくれる。 柄に仕込まれた部分から、しばらくの間は鼓膜を破壊するほどの大音響を発し続けるおかげで、スピーカーから流れる、顔をしかめずにはいられないほどの音とつきあわなければならない。 二宮でさえ予想出来なかったライノサロス達の動きがあったのは、次の瞬間。 「何!?」 突然、ライノサロス達のボスが高い雄叫びをあげた。 それをきっかけに、乱れかけていたライノサロスの陣形が急激に形成され、再び、ライノサロス達が一斉に突撃体制に入った。 突撃にそなえ、槍襖(やりぶすま)さながらに並ぶライノサロス達の角達。 その矛先は、地面に伏せる美奈代達ではない。 音を発し続ける手榴弾だ。 「なっ!?」 目を見開いた二宮の前。スクリーンの中で、ライノサロス達が一斉に突撃を開始。 手榴弾が落下した周辺は一瞬にして数百体のライノサロス達によって制圧された。 敵がいないことにようやく気づいた。 そう言わんばかりに、先頭を走るライノサロス達が、まるでつんのめるようにその場に急停止、後続のライノサロスが、前を走っていた別のライノサロスに激突する。 推定重量数百トンの巨体が潰され、あるいは肉片となって宙を舞う。 勇ましいホルンではなく、鈍い何かが潰れる音や、ライノサロス達の悲鳴が、群れを支配する。 圧倒的破壊を生み出す陣形が、今度は逆にライノサロス達自身に襲いかかったのだ。 美奈代達が動き出したのは、まさにその時だ。 全騎がコンバットモードにエンジン出力を引き上げるのと同時に、先ほどの手榴弾を群れめがけて投擲。 手榴弾の爆発とタイミングをあわせ、散開しつつ突撃。 狼狽する群れめがけて、美奈代達は、手にした兵器―――広域火焔掃射装置(スイーパーズフレイム)のトリガーを引いた。 その日の夜。 美奈代は二宮に呼び出された。 他の三人はコクピットで潰れて医務室送り。 美奈代は医務室で仮眠をとっただけでこの扱いだ。 “差別待遇だ”とぼやきつつ向かった場所は、候補生達にとっては地獄の閻魔堂―――教官室。 殺風景な部屋には、二宮の他にも別分隊の教官達、さらに校長や副校長までがいた。 美奈代は、二宮から労いのコーヒーを渡されると、全員と向かい合う場所に座らされた。 「楽にしろ」 長野が絶対出来ないことを言った後、美奈代に尋ねた。 「今回のシミュレーションについてだが」 「―――なるほど?」 美奈代からヒアリングを終え、感心した声を上げたのは長野だ。 「つまり泉、お前は」 ちょっと信じられない。といわんばかりに顔をしかめ、首を傾げる長野が訊ねた。 「ライノサロス達が、敵、つまり泉達を見ていないことに気づいたというのか?」 「は……はい」 美奈代は、手にしたコーヒーカップを弄びながら頷いた。 手のひらの中でコーヒーがぬるくなっていくが、飲んでいいのかさえわからない。 こんなに教官達に囲まれた経験さえない美奈代は、どうしていいのかわからないまま、質問に答えるしかない。 「群れが突撃陣形を作っているのに、みんなキョロキョロしているです。獲物が目の前にいるのに、どうしてだろうって……それで」 「それで?」 シミュレーターの報告書から目を離した美夜が訊ねた。 「ライノサロスが獲物を音で探していると、どうして結びついた?」 「実は」美奈代は言った。 「……風間に聞いた話を思い出したんです」 「風間候補生に?」 「はい……あの、富士学校にコウモリが住んでいるの、ご存じですか?」 「ああ。裏の森の洞窟にいるぞ?」 そう答えたのは、指導教官の小山中尉だ。 「はい。風間もそれを見つけて……いえ、そんなことはどうでもいいんです。自分は彼女に」 美奈代は小さく咳払いをして言葉を句切った。 「コウモリは反響定位(はんきょうていい)―――つまり、音の反響を受け止め、それによって周囲の状況を知ることで獲物を見つけるんだと、教わりました」 「一種のソナーだな……それが?」 「シミュレーターで、ライノサロスに、何度か肉薄まで持ち込んだことがありましたが……ずっとひっかかっていたんです。そのたびに、何だかすごく違和感があって」 「ん?」 「自分もそれが何だかわかりませんでした。それで、何度も映像を再現して……陣形形成の時、キョロキョロしている姿で、やっとわかったんです。ほら、敵が間近にいたら、どんな生き物でもやることがあるじゃないですか」 「……何だ?」 二宮が本気で訊ねた。 「わかりませんか?」 「はっきり言え。候補生」 しびれを切らせたようにせっついたのは、西島教官だ。 「シミュレーターとはいえ、ライノサロス400体の大群をわずか4騎で―――大型妖魔相手にキルレシオ1体100は、世界新記録にして最高記録なんだぞ?」 「―――へ?」 美奈代は目を丸くしてぽかんとした顔になった。 「……普通じゃないんですか?私達が単に成績悪くて……」 「バカを言うな!」西川少佐は怒鳴った。 「謙遜も度が過ぎると嫌みでしかないぞ!」 「す、すみません!で、ですけど」 「……泉」 二宮が言った。 「先を話せ。敵が間近にいたら、何をするんだ?」 「……あの」 美奈代は言った。 「敵を、見るんです」 「見る……?」 「そうです」 美奈代は頷きつつ答えた。 「必ず、敵を見ます。ところが、ライノサロスはそうじゃない。目線を感じないんです。まるで、見えていないような」 「それは……」 あきれ顔の長野が言った。 「単に、シミュレーターだからとか……」 「シミュレーターは目もしっかりと再現する。再現された映像から目線を感じる?なるほど……女のカンか?よく気づいたものだ」 とてもほめ言葉とは思えない口調で、池田大尉が言った。 「長野、その程度も知らずによく教官が務まるな」 「くっ!」 「100回殺されて、それに気づいたわけだ」 「……実戦的な功績でないことはわかっています」 美奈代は少しふてくされたような声になった。 「ですけど……」 「100回も死ぬほど間抜けで無様なマネをしたんだ。それくらいの発見はあって当たり前だ」と、池田大尉は平然と答えた。 「ヒト科のイキモノとしてな」 「……」 「で?」 訊ねたのは美夜だ。 「泉候補生は、ライノサロスの目は見えていないと?」 「……いえ」 美奈代は首を横に振った。 「シミュレーターの感覚では、おそらく100メートル見えていません。最後の広域火焔掃射装置(スイーパーズフレイム)射撃時の距離は、群れの外縁130メートルでしたが、自分たちが見えているとは思えませんでした」 「……体長の2倍までは見ることが出来るが、それ以上は、むしろ音波に頼っていると?そこまで仮定した上で、攻撃を仕掛けたか」 「自信はありませんでした」 美奈代は言った。 「ただ、他に方法が思いつかなかったのです」 「……まぁいい」 二宮は言った。 「ご苦労だった。約束通り、明日明後日は特別休暇をくれてやる。ゆっくり休め」 美奈代の退室を見送った教官達は言った。 「シミュレーターの信頼性は?」 「国際基準。本部からのダウンロードである以上、プログラムの信頼性は高い。むしろ泉は、学会で提唱されていた、ライノサロスの感覚器に関する学説を証明したことになる」 「視覚が弱く、音で補っている……か」 「人間界のサイもまた、目が小さい分、視力は弱いですが、鋭い嗅覚と聴覚をもつことで知られています」 「ほう?井上中尉は詳しいな」 「ついさっき、調べてみました」 「ふむ……それにしても」 西川少佐は感心した様子で言った。 「さすが二宮中佐の秘蔵っ娘ですな」 「まだまだ」 二宮はわざとらしく顔をしかめた。 「おだてるとつけあがる」 「しかし、ライノサロスの大群を全滅させたあの戦法は極めて有効です。自分はよくぞ考えついてくれたと」 「敵をやり過ごし、混乱させてから背後から叩くなんて、基本でしょう」 池田大尉は、バカにしたような口調で言った。 「二宮中佐のおっしゃる通り。この程度のことで、あのドンガメに参謀面されてはかないません……まぁ」 一体、ケンカを売っているのかと聞きたくなるほど、芝居がかった仕草で池田大尉は肩をすくめた。 「あのライノサロス部隊撃破シミュレーションは、世界中のメサイア乗りが血眼になって撃破を試みたものの」 池田大尉の視線が、周囲を見下しているのは確かだ。 「―――誰一人、クリアできなかった。名だたる騎士達がこぞってしくじった」 ―――お前もそのウチの一人だろうが。 皆が内心、そう思った。 「大抵が10騎から20騎の大部隊で……それをまぁ、わずか4騎ですからね。公表すれば、近衛の名にハクがつくでしょう。富士学校も」 「さてさて」 フォローするような井上中尉の言葉を遮ったのは池田大尉だ。 「本当に信じられますかね」 「何?」 「たった4騎でキルレシオ1対100?プログラムの信頼性が問われますな」 「大尉」 西川少佐が顔をしかめた。 「モノには言い方がある」 「おや?私は素直な見解を述べているだけです。プログラムのバグでもあって、ライノサロス共の動きにエラーがあった。あのドンガメ共はそれで勝てた―――そうでなければ、キルレシオ1対100は無理です。ありえない。皆がそう結論づけるでしょう。つまり」 その視線の先には、二宮がいた。 「連戦連敗の教え子の不甲斐なさを嘆いた教官が、手心を加えた―――と」 「貴様っ!」 顔を真っ赤にして席を立ったのは長野だ。 「もう我慢ならん!貴様表に出ろっ!たたき殺してやるっ!」 袖をまくり上げる長野を周囲の教官達が止める。 「おやおや」 そんな長野を、池田大尉は鼻で笑った。 「我々の間での私闘は御法度ですぞ?」 「モノには限度というものがあるっ!」 「調べればわかることです」 「―――私の潔白が証明されたら?」 「その時はその時」 二宮に、池田大尉は答えた。 「私は二宮中佐を疑っているとは一言も申し上げていませんからな」 「……いいでしょう」 二宮は頷いた。 「ただし、第七分隊のシミュレーター結果は上層部に報告はします」 「―――ご随意に」
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カラミティブラスト イフリートキャレス アブソリュートゼロ デルタストライク グラビティブレス ブルーティッシュボルト カルネージアンセム ペトロディスラプション セラフィックローサイト セレスティアルスター ファイナルチェリオ メテオスウォーム グランドトリガー タイダルウェイブ プリシードグラビティ グローディハーム ペイルフレアー ファントムディストラクション レザード・ヴァレス召喚 輸魂の呪 メルティーナ空間 カラミティブラスト 奉霊の時来たりて此へ集う、鴆の眷属幾千が放つ漆黒の炎 (英語版)The time of exorcism is at hand! Venomous servants, unleash thy dark flames! (英訳) 魔払いの時来たれり!害なすもの達へ闇の炎を解き放たん! イフリートキャレス 我焦がれ、誘うは焦熱への儀式、其に捧げるは炎帝の抱擁 (英語版)I invoke the rites of fiery Muspelheim and give my soul up to the inferno s embrace! (英訳) 我、燃え盛りし世界ムスペルヘイムに祈りて、灼熱の抱擁を呼び出さん! アブソリュートゼロ 汝、美の祝福賜らば我その至宝、紫苑の鎖に繋ぎ止めん (英語版)If ye shall accept the benedictions of beauty, then yea; let these chains of aster surround thee! (英訳) 汝らが美の祝福を受け入れるのならば、汝らを鎖でつなぎ止めん! デルタストライク 汝は知るだろう、幾何なりし封縛が如何なる訃音を告げるものか (英語版)Surely, thou can feel it! Thy days are numbered; thy death is at hand! (英訳) 汝は感じるだろう、死への秒読み、そして、目前の死を! グラビティブレス 闇の深淵にて重苦にもがき蠢く雷よ。彼の者に驟雨の如く打ち付けよ (英語版)Hark, lightning that rides within the ashen depths; descend down as a storm upon my foes! (英訳) 聴け、灰色の深淵に浮かび雷よ。彼の者に驟雨の如く打ち付けよ! ブルーティッシュボルト 天の風琴が奏で流れ落ちるその旋律、凄惨にして蒼古なる雷 (英語版)As the harmoniums of Asgard sound, their very melodies stir the ancient lightning to wake! (英訳) 大いなる調よ、アスガルドに流れる旋律の如く古の雷を呼び起こせ! カルネージアンセム 其は汝が為の道標なり、我は頌歌を以て汝を狂宴の贄と捧げよう (英語版)Hark! It is an omen! As hymns resound, thou shall be offered as a sacrifice upon the feast of madness! (英訳) 聴け、この前兆を!鳴り響く賛美歌の如く、汝らを狂宴の贄として捧げよう! ペトロディスラプション 我は命ず、汝、悠久の時妖教の惨禍を混濁たる瞳で見続けよ (英語版)Lo, ye shall look upon the calamities of heresy with beclouded eyes! (英訳) 異端の惨禍を、その曇りし瞳で見続けよ! セラフィックローサイト 其は忌むべき芳名にして偽印の使徒、神苑の淵に還れ招かれざる者よ (英語版)Ye of detestable name and virtue.. false apostle; thou art bayed back to the abyss! (英訳) 忌まわしき美徳の名をもつ偽の使徒よ、深淵のふちへ還れ! セレスティアルスター 汝、その諷意なる封印の中で安息を得るだろう永遠に儚く (英語版)Ye must desire respite from thy empty existence.. thou shall have it! (英訳) 汝は無の存在となりて安息を待つべし。・・・そしてその時は来たれり! ファイナルチェリオ 我、久遠の絆断たんと欲すれば言の葉は降魔の剣と化し汝を討つだろう (英語版)If ye trust that thy eternal bonds shall be broken, then let my words be as a vengeful blade upon thee! (英訳) 汝、久遠の絆断たたんと欲すれば、我が言の葉は怨念の剣となり汝らに降り注ぐだろう! メテオスウォーム 我、招く無音の衝裂に慈悲はなく、汝に普く厄を逃れる術もなし (英語版)No mercy for the damned; thus, thou has no escape from the grasp of catastrophe! (英訳) 忌むべき汝らに慈悲はなく、汝を縛りし厄から逃れる術も無し! グランドトリガー 我が手に携えしは悠久の眠りを呼び覚ます天帝の大剣。古の契約に従い我が命に答えよ タイダルウェイブ 虚空を伝う言霊が呼び覚ませしは、海流の支配者の無慈悲なる顎 プリシードグラビティ 光華なき混沌、上下なき漆黒。無の牢獄に捕らわれし隻眼の巨神に我は問う グローディハーム 絶望の深淵に揺蕩う冥王の玉鉾。現世の導を照らすは赤誠の涓滴 ペイルフレアー 冥府の底に燃え盛る青玉の彩光。贖罪無き罪は罰と化し、裁きの時を呼び寄せる ファントムディストラクション 十界の呼号、貴使の招来。善導の聖別がもたらせしは、魂滅なる安息と知るがいい レザード・ヴァレス召喚 我は悠久の時の渦中に身を委ねし者 其は我が名を知るがよい 知らぬものは己が痴れた者と知るべし そして刻め 我が名はレザード・ヴァレス 其の名は冥王の烙印と化し其に裁可を下すだろう 魂の救い与え賜う事を乞うならば 今一度此方へ集うべし 輸魂の呪 身を削り 寿を削り 心を削る 其の為ならば我が身を焦がす事も厭わぬと欲するも 願い叶う事能わず 故に我 禁断の秘法に手を染めん 例え我が身汚れていても 例え我が心汚れていても 其を想う力 虚にして空 神韻の如き響きと我は誓う メルティーナ空間 凍結大気と冷気の英霊よ 我橋渡しとなり 願うは婚礼の儀式 汝ら互いに結びつき 其の四方五千において凝固せよ
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第4弾 ~幻影の音楽譚~ UNIT U-062 緑 発生 緑/赤 2-3-0 C エース(1) 戦闘配備 高速戦闘 武装変更〔VF-2SS〕 (防御ステップ) 《①》このカードの部隊の任意の順番にスクアイアーチップ《UNIT、「高速戦闘」戦闘力1/1/1》2個を出す。スクアイアーチップは、戦闘修正を得る事ができず、ターン終了時に取り除かれる。 特徴 バルキリーⅡ ファイター Mサイズ [0][2][3] 出典 「超時空要塞マクロスⅡ -LOVERS AGAIN-」 1992 他のマクロスシリーズとは違う世界の統合軍主力可変戦闘機。無人支援兵器「スクアイアー」を展開するテキストを持つ。 簡単に言うと、このカード単体で高速戦闘部隊が編成できる、ということだ。更に、スクアイアーチップは格闘力も持っているので、ファイター形態でありながらVF-2SS バルキリーⅡ(ジーナ機)[B]と同じ戦闘力を持っている事になる。武装変更を駆使すれば、尚打点が上がる。是非セットで運用しよう。 また、チップユニットを手軽に生産できるという事で、カムジン・クラヴシェラとは非常に相性がよい。
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「へへっ……一番乗りってか?」 “鳳龍”のハッチを開き、都築がコクピットに乗り込んだ。 素材の匂いがとれていないコクピット内部は、都築が初めて乗った単座騎。 システムに触れるだけで興奮に背筋が震える。 「STRシステムは―――筑波に聞いたとおりだ。これのテスト担当は藤崎教官だな。体格一緒だから間違いない……よし。これなら調整なしでいける。スクリーンのスイッチは……これか?」 スクリーンにパワーが入り、都築は自分が宙に浮いているような錯覚を覚えた。 「ふぇっ、こりゃ映りが段違いだ」 かなり高性能なスクリーンを使っているのは間違いない。 自分のナマの目で見るよりモノがはっきり見える。 丁度、自分の足下あたりで二宮達に取り囲まれた美奈代が正座させられている、その表情さえはっきりとだ。 ふと、視線が美奈代の胸元にいく。 固い軍服越しでもわかる、女としての小さな膨らみ。 横に立つ美晴と比較するとかなり残念に思えてしまうが、それでも、 「やっぱ……あいつ、カワイイよな」 そう思う。 「“鳳龍”MCL(メサイア・コントローラー・ルーム)より都築候補生」 「そっちはどうです?……えっと、水上中尉?」 「さすが最新鋭です!あーっ!もうスゴイっ!」 水上中尉はMCL(メサイア・コントローラー・ルーム)で歓声をあげた。 お堅い女教師然とした中尉の興奮した声に、都築は少なからず驚いた。 「本当に、都築候補生って恵まれてますよねぇ!こんな騎、最初から与えられるなんて!」 「えっ?」 「えっ?って、知らなかったんですか?この子、染谷候補生か都築候補生どっちかに回されるって決定してるんですよ?」 「ど、どういうことです?」 そんなこと、俺は知りませんよ!? 都築はそう言ったつもりだった。 だが――― それは、言葉にならなかった。 連続した爆発音が都築の聴覚を一時的に奪った。 自分が何か叫んでいたかもしれないが、それさえ耳は音として何も伝えない。 「―――っ!」 都築はキーンと響く耳が再び音を拾うのを待った。 待つ間に、開かれたハッチの向こうの光景を見た。 ハンガーが半壊し、床に資材が散乱している。 その中に美奈代達が駆け回っているのが見えた。 山崎、二宮、柏、早瀬に宗像、風間にMC(メサイアコントローラー)も一人残らず無事だ。 「……よかった」 初めて聞こえたのは、自分の安堵のため息だ。 「候補生!」 水上中尉の叫びにも似た声がレシーバーに響いたのはその時だ。 「敵、メサイアらしき反応有!」 「どこですっ!」 「ハンガーの外っ!」 「騎体、出せますか!?」 「はいっ!ハンガーロック解除します!」 「一体、何が!?」 「敵の奇襲です!」 メサイアの機動シークエンスをかけながら水上中尉は言った。 「おそらく、海岸から侵攻」 「海軍は何を?」 「知るモンですか!ロック解除!」 バキィッ! その直後、ハンガーの外壁を突き破って水色の見たこともない不気味な外見をしたメサイアがハンガー内に入り込もうとしていた。 「行きますっ!」 都築は“鳳龍”を駆って、その騎に飛びかかった。 都築がラグビーのタックルの要領で水色のメサイアにぶつかった光景を、美奈代は隣のハンガーに通じるドアの前で聞いた。 「くそっ!カギがっ!」 力を込めてノブを回すが、ドアはビクともしない。 「泉、どけっ!」 美奈代を押しのけたのは二宮だ。 二宮はホルスターから拳銃を抜くと蝶番(ちょうつがい)に向けて発砲した。 「教官、拳銃なんてもっていたんですか?」 「目的は一つだ―――決まっているだろう?」 ガンッ! 二宮に蹴りつけられたドアは奇妙に歪んだ状態で開いた。 「なんです?」 美奈代達は開いた隙間から通路に入り込む二宮に続く。 「貴様等を射殺するためだ!」 ズンッ! ズズズンッ! ギィィィィィンッ! 爆発音に混じってメサイアの駆動音が響く。 まだ電源が生きているらしい。 最低限度の照明に照らされた通路を美奈代達は進む。 「Cハンガーの“幻龍(げんりゅう)”が動いたな―――全員、このままBハンガーのシェルターに入るぞ!」 「な、我々が何か戦う手段は!?」 「メサイアに通常の武器が通じるか!」 「Bハンガーの“雛鎧(すうがい)”は!」 美奈代は言った。 「定数からして、ここにいる全員が搭乗する数はあったはずです!」 「卒業前の貴様等に実戦をやれと!?」 「すでに都築達はやっていますっ!」 「死ぬぞ?」 「生き残ってみせますっ!」 「よし」 二宮は口元を不敵に歪め、怒鳴った。 「―――続けっ!」 「はいっ!」 「何だとっ!?」 Cハンガーをのぞき込んだ青い騎体のパイロットは、チルダという魔族だった。 苦み走った顔が、突然の巨人の出現に驚愕を浮かべた。 「人類側に“メース”が!?」 満足に武装しないで飛び出してきたのが幸いだ。 もし、剣を携えてこの状況に陥ったら、自分は死んでいた!! 相手は、この建物に自分を入れまいとして、体当たりで力押しに押しているに違いない。 まさか、慌てていて、武装を忘れていたなんて、そんなバカな話は―――! 「チルダより少佐!ポイント3で“メース”と接触!現在交戦中!」 「都築っ、よけろっ!」 突然、通信装置に入った声に弾かれるように、都築はとっさに騎体を謎のメサイアから放した。 途端に、連続した爆発が、謎のメースの正面で発生した。 「―――や、やったか!?」 ハンガーのウェポンラックからもぎ取った180ミリバズーカ砲を3発、叩き込んだ宗像は、硝煙の向こうに意識を集中した。 初陣で敵1を撃破。 それは悪くない称号だ。 「―――敵、動きますっ!」 MC(メサイアコントローラー)からの悲鳴が、その淡い期待をうち破った。 「このバケモノがっ!」 「―――くっ」 意識が一瞬、飛んだのは間違いない。 チルダは警報が鳴り響くコクピットで舌打ちした。 何かが着弾したその衝撃が、装甲こそ貫通しなかったものの、騎体内部をかなり痛めつけたことは間違いない。 水に潜って帰れるか、正直、自信がない。 「何だ?……何をした?」 困惑するチルダに、通信が入ったのはその時だ。 「チルダ、後退しろ!」 指揮官のシュナー少佐だと、さすがにすぐに分かった。 だが、 「いえっ!」 チルダは首を横に振った。 「まだ戦えますっ!ここを維持しますっ!」 「他施設は軒並み叩いた!残るはお前のポイント3だけだ!」 「なら増援を―――ぐうっ!?」 「向かっている!チルド、どうした!?チルド!」 突然、チルド騎は、横からの衝撃に襲われた。 破壊力はそれほど大きくはない。 機体表面で連続する小さな爆発。 それが衝撃の正体だ。 都築達は、その正体を知っている。 120ミリ機関砲弾。 それを撃ったのは―――。 「そこの騎!念のために聞くが、友軍騎だな!?」 シールドと120ミリ機動速射野砲を構える3騎の“幻龍(げんりゅう)”達。 候補生達にとって、一生忘れることが出来そうにないその声は、指導教官の池田大尉の声だ。 この混乱の中、彼らは“幻龍(げんりゅう)”達をハンガーから引き出し、操っているのは間違いない。 「だ、第三分隊、都築です!」 「第七分隊、宗像―――ハンガー内に同じく風間!」 「貴様からが、何故、そんな騎に乗っているのかは後で聞く!」 池田は怒鳴った。 「とにかく下がれっ!新型をこんなところで破壊されるわけには!」 「池田大尉!」 池田騎のMC(メサイアコントローラー)が怒鳴る。 「3時方向、急速に接近する騎3!」 「何っ!?」 ドシャァァァァァンッ!! ハンガーを吹き飛ばして池田騎ともう1騎に吸い込まれた光の矢。 ドッシャアアアアンッ―――!! 池田騎が、糸が切れたようにその場に崩れ落ちた。